内容説明
安政三年。坂の町、肥前長崎。鎖国政策が取られている日本で、長崎の出島だけが唯一、世界に開かれた窓だった。十歳になるお柳は、その出島で通詞をしている父・平兵衛の横で、少しずつフランス語を覚えていく。出島は女人禁制。しかし、お柳(アラミス)はフランス語通詞への憧憬をひそかに抱いていく。榎本武揚と共に幕末を生きぬいた男装の通訳の数奇な運命。
著者等紹介
宇江佐真理[ウエザマリ]
北海道函館市生まれ。1995年「幻の声」でオール讀物新人賞受賞。2000年「深川恋物語」で吉川英治文学新人賞を、01年「余寒の雪」で中山義秀文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さなごん
24
歴史物。榎本武揚という人はこういう生き方をしたのか。その影にいたアラミスことお柳の人生。2016/01/01
松風
21
読み応え抜群の幕末物。釜次郎への思いの強さとサバサバした態度が一見裏腹だけれど、それは意地ではなく、相手を心から尊敬して、信じて、その上で守ろうとしているからなのだなと思う。多分、釜次郎は精一杯尊敬に見合う自分であることでそれに報いたのだろう。2014/05/03
ringoringo
16
歴史を動かした人物の陰で、人知れず静かに生き抜いた女性が確かに存在したのだろう。決して表に出ることはなくても、誰かの心の中にしっかりとその存在を刻みつけられたのであれば、それはそれで幸せな生き方だと思えた。2015/12/22
あかんべ
10
肝心なときにへまをした釜次郎、男社会の中でがんばったお柳。そのきっぱりした生き方に拍手。2016/01/07
星落秋風五丈原
9
肥前長崎。出島は女人禁制。しかし、お柳(アラミス)はフランス語通詞への憧憬をひそかに抱いていく…。榎本武揚と共に幕末を生き抜いた男装の通訳の数奇な運命を描く。月刊誌『潮』連載に加筆し、単行本化。幕末、備前長崎。通詞の父を持つお柳はフランス語を慣れ親しみ、自分も大きくなったら通詞になりたいと思っていた。しかし、出島は女人禁制の時代、女性には無理だ思われていた時代に榎本釜次郎(武揚)はお柳を男装の通詞として雇う。名前も「アラミス」として..。幕末、明治を生き抜いた男装の通詞の生涯を描く。2006/02/09