出版社内容情報
精神科医が日々の診療場面で出会う青年期・成人期の「自閉症スペクトラム」(ASD)を対象とした臨床論。障害の受容,適応,さらには共生をいう前に,あたかも異星人であるがごとくこの星に棲むための苦労を重ねている彼らがどのような世界に棲んでいるのか,そもそもの経験の成り立ちについて,もう少し突っ込んで考えてみることはできないだろうか―精神科臨床の基本ともいうべき精神病理学のテイストを下地にまとめられた書.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
くさてる
20
専門書だけに、難解な部分も多く完全に理解したとは言い難いながら、青年期・成人期のASDを対象とした臨床論として読み応えがあり、心を揺さぶられるものがあった。ASDとして生きている人々の抱える生きにくさへの眼差しが、冷静で適切だと感じた。1章のタイトル「心の理論はどこが間違っているのか?」にピンと来た人はぜひ手に取ってほしい。2021/12/04
こほ
14
とてもよかった! 今まで読んだこれ系の本の中で一番よかった。病理とあるように病(というか障害)の根っこの理屈を豊富な症例つきでわかりやすく書いてくれていて、ものすごく沢山腑に落ちるとこがあった。あと全体的に言葉の選び方が好き。子ども/自分がASDのようなADHDのようなグレーってわけでもないけどわかりやすいブラックでもなく何の本読んでもいまいち当てはまらない(悩)という人に心底おすすめ。図書館本だったので所有したくて注文した。欲をいえば電子で欲しかった。マーカー引きまくりたいしわからん単語すぐ調べたい。2023/07/02
western
11
郡司ペギオ幸夫と併せて読むと良い。他者の志向性からの触発とそれによる象徴的個体化(φと呼ばれる)を経ていないASD者は、言語的想像力によって現前の文脈を相対化できず(シニフィアンとシニフィエの間にズレや隙間がなく)、ある意味で外部や他者が「やってこない」世界を生きている。2022/02/14
ゆいまある
11
ざっくりとしたイメージで理解しようとする傾向の強い私は、「どうして僕がASDだと分かったんですか」と問われる度に酷く緊張していました。彼らは論理的で矛盾のない完璧な言葉を求めるから。内海先生ならどう言うだろうとずっと待っていた本です。参考にします。私にとっては怖い指導者である内海先生が、幼い子供について語っているのが一体なにの兆候だろうと気になります。2016/05/05
日曜読書人
10
「木をみて森をみず」というASDの虫瞰図的世界。…私にもあるような気がしてきました。2018/05/05