内容説明
トラウマティックな事件があった―専門家による援助が終わった―その後、彼女たちはどうやって生き延びてきたか。「普通の生活」の有り難さをめぐる当事者研究の最前線。
目次
1 私たちはなぜ寂しいのか
2 自傷からグチへ
3 生理のあるカラダとつきあう術
4 「その後の不自由」を生き延びるということ―Kさんの聞き取りから
5 生き延びるための10のキーワード(身体に埋め込まれた記憶;メンテナンス疲れ;遊ぶ;時間の軸 ほか)
6 対談 では援助者はどうしたらいい?
著者等紹介
上岡陽江[カミオカハルエ]
ダルク女性ハウス代表。1957年生まれ。子どものころから重度のぜんそくで、小学6年から中学3年まで入院生活を送る。そのなかで処方薬依存と摂食障害になり、19歳からはアルコール依存症を併発。27歳から回復プログラムにつながった。1991年に友人と2人で、薬物・アルコール依存をもつ女性をサポートするダルク女性ハウスを設立。2003年に精神保健福祉士資格を取得
大嶋栄子[オオシマエイコ]
NPO法人リカバリー代表。1958年生まれ。北星学園大学大学院社会福祉学研究科博士後期課程単位取得退学。精神科ソーシャルワーカーを経て、2002年に被害体験を有する女性の福祉的支援を行う「それいゆ」を立ち上げる。NPO法人リカバリーとして認証され、現在3か所の施設を運営。北星学園大学、日本福祉学院講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こばまり
52
暴力被害等、理不尽な経験からサヴァイヴした後に陥る生き辛さ。その不自由さを生き延びるためのアルコールや薬物等への依存。なんと厄介で気の毒なことか。やり切れない。キーワードの一つとしてどんな幼少時代を過ごしたか、特に母親との関係性が挙げられる。2018/12/31
なっく
34
「つみびと」に続けて読んだので、重かった反面、彼女たちへの理解は深まったように思う。依存症、ネグレクトや児童虐待と言った悲劇の裏には、被害者と加害者の間を彷徨い、子どもも自分も既に死んだも同然の諦めがあり、助けてくれる人との距離感が取れなかったり、まさにギリギリの状況で苦しむ姿がある。その背景には、育児は女の仕事、女は男の附属物、女は働かずに家事、と言った古来からの女性蔑視風潮があり、また大家族ベースの地域社会という日本固有の事情もある。日本も早くジェンダーレスな近代国家にならないと、彼女らは救われない。2020/10/20
ネギっ子gen
32
【生き延びろ!】薬物依存の女性当事者が、<使える手段は全部使って、あきらめずにとにかく生き延びろって。そしてやっぱりひどいことにあったり、ひどい男に会ったりして刑務所行ったりしちゃうかもしれないけどさ、いろいろなものに出会ってってほしいなって思うわけ。……とにかく生き延びろって。そして生き延びたとまわりに伝えてほしい>と、身を削り記した当事者研究の最前線!暴力を始めとする理不尽な体験そのものを生き延びた“その後”、今度は生き続けるために様々な苦労を抱え込んで、茨の道を歩む人たちの現実を活写したお薦め本。⇒2021/01/29
ふうてんてん
22
薬物依存の当事者研究。薬をやめた後にやってくる大変さ、完全な終わりはなくて、回復とは回復し続ける事。ほどほどの所で生き延びていく事を続けるのが回復。薬物依存だけでなく、辛さを抱えながら生きてきた人なら思い当たる事が沢山書かれている。また、支援者にとっても大切な事がつまった本でした。2016/09/07
nbhd
17
最近気になっている「もてない男」と「ケア」を接続するヒントを探るため手にとった本。薬物依存者をケアするダルク女性ハウスの記録や分析。ごっつい研究でもないので、読む人にとって感じる事さまざまかも。大きく頷いたのは「相談は難しい」っていうところ。そうなの、悩みを相談するのって辛いの。「支配」されるかんじがするし、「恥」だし、結局「解決」されないし。その点を抑えたうえで、当事者に対して、「安全な距離感」として“ちょっと寂しい”くらいの距離感と「グチ」ベースのコミュニケーションを提案しているあたり、実践的だ。2021/02/26