内容説明
これまで、イランという国のアイデンティティーを探ろうとする試みは、さまざまな角度から行われている。現在のイラン国境線内に相当する広大な地域が共有する歴史的記憶や、政治イデオロギーの潮流、言語の連なり、文化、宗教などを手がかりに、イランという国をとらえ直そうとするものである。本書は、イランに特定の一体性を与えているものが何か、という問いに対するひとつの答えを提示するために、国民経済の制度的現実に注目するものである。イランを現存のイランたらしめているひとつの装置としての国民経済を具体的に抽出することによって、かかる一体性の根源は何かを考えようとするものである。
目次
第1章 イランにおける国民経済の形成―大戦間期の問題
第2章 革命以降のイランにおける石油と経済発展
第3章 イランの生産組織と流通機構―テヘラン・アパレル産業の事例
第4章 イランの工業と地域性―ヤズド州の繊維産業についての研究
第5章 イランにおける農業政策の展開と農村社会の変化―イラン・イスラム革命前後を中心に
補章 イラン経済における尽きない資源―ペルシア絨毯