内容説明
読まれなくなった物語の主人公シルヴィは、やけになって掟破りの行動にでる。久しぶりに本を開いてくれた読者を、さし絵のなかから見上げてしまったのだ。「本が開くぞー」というかけ声で幕を開ける摩訶不思議な物語。
著者等紹介
タウンリー,ロデリック[タウンリー,ロデリック][Townley,Roderick]
詩・小説・ノンフィクション・文芸評論をてがけ、これまで10冊の著書を出版した。フルブライト奨学金をうけてチリで教えたのち、編集者としてニューヨークで活躍し、現在はカンザス州の自宅で執筆活動に専念している。ジェシー、グレースというふたりの子供がいる。妻は詩人のワイアット・タウンリー
布施由紀子[フセユキコ]
大阪外国語大学英語学科卒業。出版翻訳家
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
121
物語内の王女が、現実世界に湧出してくるといった珍しい構造の物語。すでに書かれた物語、世代を超えたその読者、それらが混淆した後の新たなる筆者、そしてそれを今読んでいる私たち読者、というようなメタフィクション世界が構築されている。読後感もきわめて爽やかだし、物語を「読む」ことの意味が新たになることにおいても斬新だ。ただ、タイトルを原題通りの『とてもすてきな大きなこと』にしなかったことは納得がいかない。子どもたちがこれを読んでいて、まさしくこの本こそがそれなのだと知った時の驚きと興奮を想像しなかったのだろうか。2014/01/04
はる
50
素敵な装画に魅かれました。本の中の登場人物が主人公なのが面白い。いつも読者のためにストーリーを演じていた彼らですが、ある日現実の世界に足を踏み入れたことから大問題が起こります。児童書ですが人の一生の儚さも描かれていて、大人が読んでも耐えうる奥深さを感じました。爽やかなラストが素敵。本が愛しくなりますね。やっぱり本は大切にしないと。2016/11/02
小夜風
30
【図書館】本の中の登場人物たちは、本が閉じられている時は何をしているのだろう。その本が誰にも読まれなくなったら?その本が何らかの理由で破損してしまったら?登場人物たちの視点なので読者に何があったのか全てを理解することは難しかったけど、何かとても大変な、辛いことがあったのかなと想像しました。子どもの頃はお気に入りの本を何度も繰り返し読んだものですが、今は……。「本が開くぞー」の叫び声に胸が詰まり、涙が出ました。2015/12/10
星落秋風五丈原
27
「シルヴィの生涯はすばらしいものでしたが、それを生きる機会はあまりありませんでした。」冒頭の一文。本の中に住んでいて、普段は王様、お妃様、家来や侍女、泥棒といった他の登場人物と一緒に、頁の陰でのんびり暮らしている。読者が本を開いた時だけ表舞台に登場し、書かれた通りの台詞をしゃべって自分の役を演じる。いつも変わる事なく、同じ物語を上演する。読まれなくなった物語の主人公シルヴィは、やけになって掟破りの行動に出る。2003/09/26
りー
25
まだ世界というものが不思議で出来ていた子供の頃。おまじないと数学が、依然同じくらい確からしかった年頃に出会っていたら、この物語は僕の心の片隅に、静かに、だけど力強く根付いた事だろう。これはそれくらい鮮やかで瑞々しい、子供に世界の見方を変えさせうるファンタジーだ。小さい頃から本が好きだった人には、騙されたと思ってあらすじを読まずに手に取って頂きたい。この本はきっと一ページ目から本好きの心を掴んで離さないから。2013/12/11