内容説明
外交官としてソ連崩壊を目の当たりにした筆者は、新生ロシアのモスクワ大学で神学を講義し、若者たちに空恐ろしさを感じる―「ロシアはいずれ甦り、怪物のような帝国になる」。プーチン大統領の出現でその恐れは現実化した!今後のロシア帝国主義政策を理解するために必須の、ロシア知識人たちの実像を描き出す。
目次
1 モスクワ大学哲学部
2 アフガニスタン帰還兵アルベルト
3 閉鎖核秘密都市出身の女子学生
4 ソ連科学アカデミー民族学研究所
5 エトノクラチヤ
6 バクー事件
7 主権宣言
8 境界線上の人間
9 もう一度マルクスへ
プーチン論 甦った帝国主義者の本性―文庫版のための増補
著者等紹介
佐藤優[サトウマサル]
1960年生まれ。75年、浦和高校入学、同年夏に一人で東欧・ソ連を旅する。79年、同志社大学神学部入学、85年、同大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。在英国日本国大使館、在ロシア連邦日本国大使館に勤務後、95年より外務本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍する。2002年5月、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕され、512日間東京拘置所に勾留される。05年2月、執行猶予付き有罪判決を受ける。09年6月、最高裁によって上告が棄却された(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ehirano1
106
前半部のモスクワ大学哲学部における学生との触れ合いは小説を読んでいるのではないかと錯覚するくらいでした。学生時代とはまた違った佐藤氏の教育情熱は圧巻です。学生たちのその後も記載されていて、読んでいる私自身が感慨に浸る始末でした。2019/09/14
gonta19
79
2012/2/12 Amazonより届く。 2016/4/11〜4/23 ソ連崩壊とロシア共和国成立の裏側を描く、佐藤氏の洞察は鋭い。国を思う若者がいれば、国は再生する、というあとがきの言葉は重いなぁ。佐藤氏も書いているように、今の日本の大学生達にこの本を読んでもらいたい。2016/04/23
aponchan
23
佐藤優氏作品も数冊読んだが、外務官僚として型破りで、モスクワ大学の講師を務める経験者は日本でも稀有な存在だったのに、切った日本は勿体ないことをしたのではないかと思わせられる本。どんな組織でも同じかもしれないが、組織にとって有益な過ぎる人財は疎まれ、評価されないことがあると思うが、作者はその内の一人かもなどということを感じながら読了。因みにロシア人の名前は、全く頭に入らない。2020/08/13
雲をみるひと
15
佐藤優氏の2011年の作品。巻末の増補版も含めて1990年前後のソ連末期の記述が大半。作者がCIS諸国のキーマンに入り込んでいく過程がわかる内容もよいが、回想とは思えないくらい話の流れがはっきりしていて読み物としも面白い。作者本人も言うように混乱期のソ連のインテリ達のものの見方や行動から学べることが多いと思う。色々な意味で示唆に富んだ作品。2020/03/20
中島直人
15
著者の神学的哲学的な論説が2/3、1990年代のロシア若手エリート層の意識、姿が1/3という印象。ロシアエリート層のやたら高い能力と精神性に圧倒される思い。また、日本の国益を担う外交官でありながら、真摯に向き合う高度な知性が有れば、ロシアでも受け入れられることに感銘を受けた。2016/06/04