文春文庫<br> エレクトラ―中上健次の生涯

電子版価格
¥815
  • 電書あり

文春文庫
エレクトラ―中上健次の生涯

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 463p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784167773908
  • NDC分類 910.268
  • Cコード C0195

出版社内容情報

現代文学の巨人、中上健次はいかにして作家になり、いかにして死んでいったか。幼少期から最期までを丹念な取材で描いた傑作評伝。

内容説明

和歌山県の“路地”と呼ばれる被差別部落に私生児として生まれた中上健次。彼はいかなる宿命を背負い、作家となったのか。肉親、同級生、新宿の荒くれ時代の仲間、担当編集者などへの取材を通して、中上健次という作家の「核」を説得力のある言葉であぶりだす。現代文学の巨人の生と死を渾身の筆で描いた傑作評伝。

目次

第1章 路地へ
第2章 変身
第3章 パッシング
第4章 故郷を葬る歌
第5章 わが友連続射殺魔N
第6章 父になる
第7章 出世作
第8章 核を食らう獣
第9章 光をあびて
第10章 言の葉の海
第11章 熊野に死す

著者等紹介

高山文彦[タカヤマフミヒコ]
1958年、宮城県高千穂町生まれ。法政大学文学部中退。1999年刊の『火花―北条民雄の生涯』(飛鳥新社、角川文庫)で、第31回大宅壮一ノンフィクション賞と、第22回講談社ノンフィクション賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ハチアカデミー

22
B 人物評伝に客観的事実はいらない。中上の作品と資料、関係者からの聞き込みによってまとめられた現代の神話である。『枯木灘』を中心とした独自の世界観をもつサーガが、自身の生い立ちや経験、感性から生み出された訳ではなく、親の仕送りに苦々しい思いを抱きつつも頼りにし、鬱々とした日々の中で読書に励み、そして編集者との丁々発止のやりとりの果てに生み出されたというストーリーが素晴らしい。芥川賞を受賞し、編集者に抱きつく場面、これは目頭が熱くなる。天皇の言の葉に対峙し、異なる言葉、物語を生み出さんとしていた件も印象的。2012/07/20

ミエル

20
若者ゆえの喘ぎ、持て余した暴力性、その根底にある不安と虚無、青臭い中上作品の原点はやはり健次そのもの。精子臭さ、という文中の表現が非常に印象的であり適格だなと再確認。生まれついた処遇から形成されたアイデンティティに翻弄される姿、感性がやはり魅力的なんだな。個人的には、作家という人種は本来の自分を隠し創作を続けるイメージが強いが、健次は別。フォービズムの画家のようなポテンシャルを感じるのだけれどどうだろう?野獣派ならではの五感すべてに刺激的な作品、中上作品はこのジャンルじゃないのかな。2017/01/11

くろすけ

19
中上健次とは「路地」を書く使命を帯びて生まれ生きた人だったのだと感じ入った。その宿命に苦しみながらも全力で使命を全うした人生に対する深い尊敬に満ちたこの評伝を読んで、私がなぜ中上健次に心惹かれるのか少しだけ解ったような気がした。酒・クスリ・DVにまみれた魁偉な風貌の中に、純粋さ、一途さ、気高さを内包した中上は、あたかも一箇の人間の中に路地を体現していたかのような存在だったのだ。水上勉から掛けられた「あなたには借り言葉がひとつもないね」という言葉に深く肯きながら、この本を傍らに中上健次を読み直そうと決めた。2016/08/07

oz

15
初読。作家論の最大の魅力は日常の時間に絡め取られた生活者がいかにして作家に変貌したのかを解き明かす試みである。本書は難産の末に陽の目を見なかった幻の処女長編『エレクトラ』を題に冠し、作家として世に認められる以前の中上健次に焦点を当てる。関係者への聞書き、紀州熊野の歴史・文化的考察を交えた労作である。中上は路地(被差別部落)に産まれた。文盲の母のもと多感な少年期を過ごし、文学を知った後はエリック・ホッファーに倣って肉体労働者と作家の二足の草鞋を履いた。円熟期の作『岬』『枯木灘』へと到る軌跡は感動的である。2016/05/06

michel

10
中上健次の生涯。路地に生まれ、作家を目指す。書きたい欲求と書けない苦悩に揉まれる。〈ほんとうに書きたいことはわかっている。絞め殺したいくらい愛しい故郷のこと〉という彼の魂の声が聞こえる。また、亡くなるしばらく前に、離れて暮らす次女を励ます手紙に〈人間存在の尊厳を示すことだ。そのためには、英知が要る。豊かな感受性が要る。不正義と戦う本当の武器〉と。彼の苦悩の果ての言葉だ。秋幸三部作の最終『地の果て至上の時』はまだ読んでいないので、読まねば。2022/03/28

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/627911
  • ご注意事項