内容説明
R省の局長を父にもつ田沢輪香子は、旅で知り合った考古学好きの青年と深大寺で再会する。和服の女性と一緒のその青年は小野木喬夫といい、東京地検の新任検事であった。喬夫と連れの女性・結城頼子は仮度かの逢瀬を重ねてきたが、頼子は喬夫に素性を明かすことはなかった。輪香子はその後、喬夫と交流をもつようになる。
著者等紹介
松本清張[マツモトセイチョウ]
1909(明治42)年12月、福岡県企救郡板櫃村(現・北九州市)に生れる。53(昭和28)年「或る『小倉日記』伝」で第28回芥川賞を受賞。56年、それまで勤めていた朝日新聞社広告部を退職し、作家生活に入る。63年「日本の黒い霧」などの業績により第6回日本ジャーナリスト会議賞受賞。67年第1回吉川英治文学賞受賞。70年第18回菊池寛賞、90年朝日賞受賞。92(平成4)年8月死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナキウサギ
36
ひとの心情というのは瞳に、そしてその後ろ姿に現れるという。それぞれの行動や言動と共にその辺りの像を想像しながら、、下巻に移ります。2022/02/01
シュラフ
22
松本清張さんらしい作品である。舞台が 諏訪にはじまり、深大寺、富士、佐渡、と日本各地を転々とするこの楽しさ。そして登場人物が高級役人の娘たる輪香子、考古学好きの若き検事見習いの小野木、そして謎の女にしてはっとするような美人の頼子。相変わらず偶然が偶然を呼ぶような都合のよい展開であるが、不自然さを気にせずに読み手をあきさせない。この上巻は 事件らしい事件がおきずにこの先の展開はまったく見えないのであるが、なんとなく頼子の旦那の怪しさからすれば政財界を巻き込んだ疑獄事件に発展していきそうな予感がする。2015/05/22
きのこ
20
久々の清張ワールド、イラつくほど懇切丁寧な心情描写が愉しい!不倫と贈収賄、官僚と検事とブローカーもどき、これだけ揃えば如何様にも料理できます。急ぎ下巻へ。2018/07/30
Nozomi Masuko
20
役所の局長を父をもつ主人公は、旅先で知り合った考古学好きの青年と郊外の寺で再会を果たす。彼は東京地検の新任検事で、素性を明かさぬ女性との恋に悩んでいたー。ひさしぶりの松本清張作品。ここ最近読んでるのが清らか目な作風だったから暗めな感じで心地よい。笑。上巻は展開が少なかったけど、下巻は怒涛っぽいから楽しみ。2016/05/17
YUUUUMI
14
人妻と青年検事の恋愛とその行方を描く、著者の代表的長編恋愛小説。 殺人事件の起こらない松本清張作品で、ワカコ・タカオ・ヨリコの織り成す旅の風景を感じながらの偶然の出会いが描かれる。ヨリコのハンカチでタカオの唇を拭うとうすい紅色がついたなど、直接的な描写がないのがやけに色っぽく感じるし、どこへも行けない車の道に例えた秘めた恋愛模様もまた素敵だ。 それぞれの主要登場人物からの視点で描かれていき、この先の展開に波乱が訪れていきそうな予感を抱いた。2023/02/15