内容説明
1964年、東京オリンピックで世界中を魅了し金メダルを獲得したベラ・チャスラフスカ。だが、東欧社会主義圏のチェコに生まれ育った体操の女神のその後の人生は、あまりにも過酷なものだった。時代の荒波に翻弄されながらも自身の生き方を貫き通そうとした女性の個人史を丹念な取材によって描いた渾身の力作。
目次
序章 旅へ
第1章 寒い国のバラ
第2章 東洋の娘たち
第3章 春、そして冬
第4章 復活と悲劇と
第5章 帝国に生きて
第6章 自由ロシアの子
第7章 メキシコの花嫁
第8章 白い妖精
第9章 歌声は消えず
終章 狐の森
著者等紹介
後藤正治[ゴトウマサハル]
1946年京都市生まれ。72年京都大学農学部卒業。ノンフィクション作家。90年『遠いリング』(岩波現代文庫)で第12回講談社ノンフィクション賞、95年『リターンマッチ』(文春文庫)で第26回大宅壮一ノンフィクション賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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moe
2
東京、メキシコ五輪で体操女子の金メダリスト、ベラ・チャスラフスカの伝記。彼女の魅力はその美しい演技だけでなく、一生揺らぐことない信念を通した生き方にあります。ベラの病のため作者は本人に会うことは叶いませんでしたが、世界各地に広がる関係者の話を聞き取り、丁寧な調査と深い考察でその魅力を伝えています。2020/01/04
にゃんしー
1
チェコスロヴァキア(当時)の体操選手である「ベラ・チャスラフスカ」の半生を追いかけたノンフィクション。ベラは東京五輪とメキシコ五輪で合計7つの金メダルを獲得しておりその美しさから「五輪の名花」とも呼ばれたが、ノンフィクションで描かれていることは、そんな栄光とはほど遠い。当時の東欧諸国の例に漏れず、そこで生きることは必然的に政治との交錯を避けることができなかった。ベラはそのなかで、「戦う」「逃げる」でもなく「自分らしくある」ことを選んだ。それは本書の中で度々暗に問われる「美とは?」への回答に他ならない。2018/06/10
Kuliyama
0
チャスラフスカさんの生き方に共感して、一気に読みました。皆さまにお薦め致します。この本ではチャスラフスカさんは入院していましたが快復されて、最近の新聞記事で元気な姿を拝見してほっとしました。2014/04/01
読書家γ
0
★★★☆☆ 団塊世代の郷愁のような思いに満ちた作品だった。東京オリンピックのヒロインとは言うけれど、日本人にとってかの大会は東洋の魔女の活躍に歓喜し、アベベの速さに驚きつつ円谷の銅メダルに充足した…というイメージが強いため、チャスラフスカに対する筆者の思い入れが少し浮いていた印象。チャスラフスカ当人のことよりも、前後の時代のオリンピック選手の群像劇の方が面白かった。2012/03/05