内容説明
1980年代後半、「軟体動物みたいな、ビールの泡のような日本語がはびこる」現状や、人を言いくるめたり口喧嘩に勝つための屁理屈の達者さをよしとする風潮を、司馬はしきりに嫌っていたという。第2巻には大岡信との「中世歌謡の世界」、丸谷才一との「日本文化史の謎」等、6篇を収録。さまざまな角度から、日本語の本質に迫る。
目次
中世歌謡の世界(大岡信)
日本文化史の謎(丸谷才一)
空海・芭蕉・子規を語る(赤尾兜子)
日本語その起源の秘密を追う(大野晋)
日本の母語は各地の方言(徳川宗賢)
“人工日本語”の功罪(桑原武夫)
著者等紹介
司馬遼太郎[シバリョウタロウ]
大正12(1923)年、大阪市に生れる。大阪外国語学校蒙古語科卒業。昭和35年、「梟の城」で第42回直木賞受賞。41年、「竜馬がゆく」「国盗り物語」で菊池寛賞受賞。47年、「世に棲む日日」を中心にした作家活動で吉川英治文学賞受賞。51年、日本芸術院恩賜賞受賞。56年、日本芸術院会員。57年、「ひとびとの蛩音」で読売文学賞受賞。58年、「歴史小説の革新」についての功績で朝日賞受賞。59年、「街道をゆく“南蛮のみちI”」で日本文学大賞受賞。62年、「ロシアについて」で読売文学賞受賞。63年、「韃靼疾風録」で大佛次郎賞受賞。平成3年、文化功労者。平成5年、文化勲章受章。平成8(1996)年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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レアル
54
歌謡や俳句等から日本語の本質に向かう。いつも何気なく使っている日本語を真面目に考えさせられた巻だった。そして同じ言葉でも地域によって異なるし進化もする。「うた」についての対談は私の知識不足できっと半分も理解出来てなかったが、日本語について語り合うトコロくらいからは頷きながら納得しながら読んだ。物事の捉え方が面白く読み始めたこのシリーズ。しかし私程度の知識の読み手に内容がついていけるのかと読みながら不安になる。。2018/09/07
クラムボン
18
最近丸谷才一の「日本文学史早わかり」を読んだばかりでして、この選集には執筆直後の司馬遼太郎との対談がある。丸谷から申し入れたそうで「日本文学史における宮廷文化と勅撰集の重要性」を話したかったことが伺える。「日本も日本人も鎌倉時代以降に生まれ、王朝文化は外国だと思っている」司馬さんとは拠り所が全く異なる。…その為か、丸谷の意気込みも一歩通行気味で、司馬さんに上手いことあしらわれた感じがする。今回は再読でもあり、6人との対談の内から他に詩歌を題材にした詩人の大岡信と俳人の赤尾兜子の回を読んでみました。2022/05/14
時代
12
司馬さんとの対談集。特に日本語についての括りで。言語の事は難しいです。ついていけない所もちらほらとあり苦戦しましたよ。もし司馬さんが今も生きていたら、現代日本語に憂いていただろうなぁ◯2020/02/02
はかり
10
司馬が六人の研究者と日本語の生い立ちなどについて対談する。漢語から和歌、俳句、関西弁等々幅広い知識に目が回る。現代の文章などに関して、子規が特筆ものの功績を残したことがよく分かる。それにしても、日本語の奥深いことか。2018/07/27
でんすけ
7
言葉には、感情表現と論理性の側面がある。機能性や論理性ばかりでは、日本語の持つ情緒感覚が描写しきれなくなってしまう。標準語では、論理性はあるが感情に訴えるパンチに欠ける。この対談当時よりも日本語はずっと論理性たかく、機能性重視になっているだろうと思う。反面、洗練された情緒感は失われているかもしれない。ことばの重みはたぶん昔よりも軽くなった。進化した側面もあるけれど、失ったものもあるのではなかろうか。こういう本を読むと考えてしまいます。2016/07/31