文春文庫
冬の水練

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  • サイズ 文庫判/ページ数 218p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784167545147
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0195

内容説明

物置にあったラケットと古い電気スタンドから呼び覚まされる記憶、患者のおばあさんが持ってきたインゲンを前に診察室ではずむ胡麻和えのコツ…。心身の平穏に勝る人生の目標はもうない。いまは、うつ病にからめとられながらも、自裁せずに生き続けた自分をそれだけで肯定したいのだ。静かなる希望が湧いてくるエッセイ集。

目次

トラのいる十二年
社長道中記
物置における追憶
麻雀
医局の孤独
リアルな料理
集団生活
最後の仕事
上京
猫に小判
トイレの漫画
臨床講義
とても小さな旅
医者の言葉
森と湖
やめる
医者への謝礼をめぐる鼎談
けつの穴
七人の侍
好きなもの
太宰治の顔
波の音に沿って
浜辺の徘徊
よい医者
冬の水練

著者等紹介

南木佳士[ナギケイシ]
昭和26(1951)年、群馬県に生れる。秋田大学医学部卒業。現在、長野県佐久市臼田に住み、佐久総合病院に勤務。地道な創作活動を続けている。56年、難民救援日本医療チームに加わり、タイ・カンボジア国境に赴く。同地で「破水」の第53回文學界新人賞受賞を知る。平成元年、「ダイヤモンドダスト」で第100回芥川賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

105
心に染み入るエッセイ集。自分の生活を慈しむように書いている点が素晴らしい。読んでいると心の屈託がほどけて、ささくれた心がすうっと楽になる。とは言っても、この素晴らしさは南木さんが医師として働きながら、絶えず死に向き合ってきたことから生み出されたものだろう。「太宰治の顔」の中に、次のような一節がある。「太宰になくて、私にかろうじてあったものは、この、地に足をつけてしたたかでたくましい老人たちとの直接の触れ合いだったのではないか」。この文の中に南木佳士の小説の良さが凝縮されている気がした。2017/04/01

algon

13
変わった題名だなと手に取ったのはずいぶん前の事。芥川賞作家の内科医がうつ病からの回復期に書き溜めたエッセイ集は当然身辺周辺の事ながら相当推敲を重ねたようで何とも滋味深い文章に満ちていた。この著作以来著者を殆ど読んできた。対談集を残すだけと思う。そして時間をおいて再読を繰り返している。初読以来の再読だがやはりいい本だなぁと。相当強い個性の著者が相当強い自省を繰り返して出してくる言葉はある場所では鋭く怜悧なのだが、病を越えて得た優しさや度量も感じられ、平明な着地を見せるところがプロ作家のワザか。佳い本でした。2022/12/15

ワッピー

6
初読の作家さん。うつを発症し、それまでの医局の生活から離れたことで見えてきたことどもをしみじみと「聞かせる」エッセイ集。時代の趨勢、自分の老い、価値観の違う後輩たち、それまでできていたことができなくなった日常の苦しさと気づきという誰もが体験するであろう局面を平明に描写し、ご自分の苦しい経験を受容し、また受容しきれないということをも含めて肯定しているという印象です。自分も、思わず叫びたくなるようなこと、苦い思い出、あの時こうしていたらという迷いにぐるぐるしますが、このように「静かに」戦い続けられるだろうか?2017/05/19

そろばん塾の生徒

4
一時ハマりにハマッた南木佳士さんの随筆集。内容は彼の他の作品とそれほど代わり映えしていない。自らの身辺雑記と生い立ち、家族のこと、猫のこと、それから以前煩った躁鬱病についての話題を順番に綴っているだけである。けれどとても味わい深い。 2012/09/13

博多のマコちん

3
書下ろしのエッセイ集をある程度まとまったら発行するつもりで書かれたものなので、内容は筆者の思うにまかせたものばかり。一篇の枚数を同じにして締切を意識しないで書かれていることから、いつもにも増して落ち着いた筆致であり、再読だったけれど、ゆっくりゆったり楽しんで読むことが出来ました。南木さんファンなら、読んで満足のエッセイ集になること間違いありません。2020/06/25

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