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文春文庫
急な青空

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  • サイズ 文庫判/ページ数 241p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784167545130
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0195

内容説明

過剰なる記憶力が、患者や家族のもがき苦しむ姿を鮮明に保持していたために、心の病を得てしまった。以来、大切なのは日常の細部になったが、それでいい。いまはただゆるやかな坂を下る、その力の抜き方だけを会得したいのだ。医師だからこそ語れる、いま在ることの愛おしさ。心と身体にやさしいエッセイ集。

目次

神社にて
言葉の手帖
落ち着きのない読書
未来のない写真
春の祭りの日
ステッパー幸吉号
禁令の釣り
日曜日の贅沢
金の価値
フォークダンスの記憶〔ほか〕

著者等紹介

南木佳士[ナギケイシ]
昭和26(1951)年、群馬県に生れる。秋田大学医学部卒業。現在、長野県佐久市臼田に住み、佐久総合病院に勤務。地道な創作活動を続けている。56年、難民医療日本チームに加わり、タイ・カンボジア国境に赴く。同地で「破水」の第53回文學界新人賞受賞を知る。平成元年、「ダイヤモンドダスト」で第100回芥川賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

290
ここに収録されたエッセイは医家向けの月刊誌「SCOPE」に連載されていたもの。お医者さんたちが読めば、同業故の共感や、時には反発もあるのかも知れない。また、この時期は随分快癒に向かっていたとはいえ、南木は鬱の状態にあり、したがって彼は医家であると同時に患者でもあったのである。それでも、この時期(特にこれに先立つ時期)の彼の小説が、どこまでも陰鬱に沈潜していったのに比して、エッセイでははるかに軽やかである。周りの自然への対し方もまたそうだ。これまで南木の小説を読んできた読者としては素直に嬉しい限りである。2017/01/04

みも

115
2000年1月号~02年12月号の3年間、医療関係者向けの月刊誌に連載されたエッセイ集。長く苦しんだ鬱病からの、回復の兆しが仄かに見えてきた時期の日々の雑感。タイトル『急な青空』とは、逡巡しつつも霧の蓼科を車で登った先に、突如現れた真っ青な空を目にした時の驚きと歓喜から。その後登山口から這いつくばるように登り切った頂上から望む絶景。そこに、長年に亘り苦しめられた鬱屈からの光明を見たのだろうか。変わる事のない自嘲的で謙虚な文章…自然への畏敬や文学への思い、医師としての心情、そして奥様やご子息への言及もある。2019/12/17

ホークス

26
著者は医師を「業の深い仕事」という。クライアントの私的な面、それも意思の力でどうにもならない部分(死を含む)に向き合うだけに、ストレスが強いのは当然だろう。本書は、うつ病を患いながら現役の医師であり小説家である著者のエッセイである。穏やかに諦念を持って物事を捉えている様に見えるのは、心に負荷をかけ過ぎぬ様用心しているためか。しかし、世界を淡々と受け入れている様でも、随所にこだわりや深い洞察が顔を出す。結局著者にとって小説を書く事は、苦行であると同時に一種の治療なのかもしれない。気持ちを鎮めてくれる一冊。2017/01/22

博多のマコちん

10
またまた南木佳士のエッセイの世界に浸る。南木佳士のエッセイは自分のやってること(やってきたこと)とそれらに係わる人たちとの交わりを通じて感じたことを表したものがほとんど。静かで落ち着いた筆致が、すんなりと私の心に落ちてくる。同世代のせいか、個人から少し離れた社会的な事柄についても、その時代的背景がわかるし心情も理解できて、共感すること多し。「ステッパー幸吉号」「日曜日の贅沢」「ふいの旅」「日付のある本」「五十年」などがgood! これからもポツリ・ポツリでよいので、彼のペースで書き綴っていってほしい。2020/08/16

刺繍好きの糸ちゃん

10
文章の佇まいは昭和を思わせる。が、書かれたのは21世紀。医師と物書きという2つの職業、思うにまかせない体調、家族、心の揺れを信州の自然をバックに描く。昭和の風景としか思えないのは、筆者が原稿はシャーペンで書く超アナログ人間、ネットが介在しえない患者さんとのやりとりが挟まれるからか。    物書き臨床医が描く人生の下り坂エッセイ集。。。しんみり来ます。。。。読みながらいいなーと思ったのは「保育園に行きたい」。が、読了して見返すと「よく書いたな」とも思う。常人が書けないことを書くから物書き、小説家なんだなぁ。2020/07/12

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