文春文庫
神かくし

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  • サイズ 文庫判/ページ数 213p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784167545123
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

九十の老姉妹に誘われるまま、山へキノコ採りへ出かけたが…。表題作のほか、伯父の叙勲祝賀会で見知らぬ老人から語られる話の真偽は?(「濃霧」)、急逝した同級生の遺した原稿に導かれ高校時代を過ごした町へ(「火映」)など、日常の中の夢のような現実と静かに向かいあう、再生する心の物語全五篇を収録。

著者等紹介

南木佳士[ナギケイシ]
昭和26(1951)年、群馬県に生れる。秋田大学医学部卒業。現在、長野県南佐久郡臼田町に住み、佐久総合病院に勤務。地道な創作活動を続けている。56年、難民医療日本チームに加わり、タイ・カンボジア国境に赴く。同地で「破水」の第53回文学界新人賞受賞を知る。平成元年、「ダイヤモンドダスト」で第100回芥川賞受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

117
最近南木さんの本ばかり読んでいる。常備薬かもしれない。医師としての日常を描く物語ばかりで、真新しいことは少ない。自分のうつ病、育てもらった祖母のこと、信州の自然など他の本でも繰り返し語られていることが、ここでも描かれている。それでも、心に響くし、読んだ後に心の中の鬱々としたところが取り除かれて、少しだけ明るい気持ちになる。医師として患者に誠実に向かい合っている姿勢が、物語を通しても感じられる。しんどい人生を共に生きる人たちへの優しさが、物語の根底に流れている。だから南木さんの本を読むのをやめられない。2016/05/13

名古屋ケムンパス

45
夕闇が迫る森閑の中で、ゆったりと流れる山里の暮らしに自らの再生を綴る全5編の短編集です。祖母の言葉と父の思い出の中から記憶のない母への憧憬が、かざりけのない著者の語り口から滲みだしています。なかでも九十歳の老姉妹に誘われて、突然キノコ狩りに出掛ける表題作の「神かくし」が印象的です。姉妹の心の襞に触れ、どっきりもします。仮に帰宅しないことがあったとしても、それは山の風景の中で心身が一体化したことの表れであるかのようです。きわめて味わい深い一冊です。2020/06/27

アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯

40
信州の病院に勤務するうつ病の医師という南木さん本人がモデルらしき主人公の登場する短編集。表題作は以前『きのこ文学名作選』で読んで、南木さんを知るきっかけとなった作品。やはり、この老姉妹とのきのこ狩りの話が一番好きだ。死の影がちらりちらりと顔を覗かせながらユーモアがあり、この老姉妹は妖怪?妖精?この世のものならぬ雰囲気がある。2016/12/23

メタボン

29
☆☆☆☆ 90過ぎの老姉妹に連れられ山へキノコ狩りに行くが翻弄される「神かくし」、自分の母方の祖母の弟と名乗る老人が自分のルーツにつながる話を話し出す「濃霧」、鮎釣りをした時踏み石とした石に釣果である17という数字を刻んだ「底石を探す」、いずれも老人からの語り掛けが人生の深淵を窺う気分にさせ、独特な読後感を伴う。南木佳士でなければ描けぬ境地だと思う。2022/07/06

風に吹かれて

22
2002(平成14)年刊。五編収録。  実際に起こったことなのか、いつか見た夢なのか。定かでないことがあるが、知らなかったことが知らされ、あるいは知られていないと思っていたことが知られていると知ったとき自分の立ち位置がゆらりとする。そっとやり過ごせるか立ち向かうか、日常の日々は、多かれ少なかれ、厄介なものだ。でも……。  体力を超えない速さで一歩一歩足を動かし山に登る。もちろん景色を楽しみながら、でも、何にも目を向けず単純な動きに身を任せることも大事。できれば、同伴者がいた方がいい。 →2022/02/24

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