文春文庫<br> 落葉小僧

文春文庫
落葉小僧

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  • サイズ 文庫判/ページ数 235p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784167545031
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

人の生死を見つめ、心にひそむ孤独と不安に耐えながら、着実に医業に励む医師──。高原の光と風と水のせせらぎに満ちた短篇集!

内容説明

落葉に脅えながら自らの命を絶つ女。ただ、茫然と落葉を見つめる男。季節は、秋。表題作のほか、ふつうの家族の休暇を描きながら人生の断面を切りとった「ニジマスを釣る」など、温かく透明な眼差しで、人の歓びと哀しみを見つめつづける短篇六本を収録。著者の、芥川賞受賞後のさらなる成熟をしめす作品集。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

みも

198
30~40頁の6篇。表題作に始まり「フナを釣る」「ニジマスを釣る」「ハヤを釣る」「ヤマメを釣る」と並び、トリは表題作の続編「金印」。釣りのノウハウ本の様な題名が並ぶが、見紛う事なき小説集。全編に亘り人生に溶け込む釣りの描写が作品に彩りを与え、渓流の水音や水面を跳ねる魚達の躍動が鮮やかに浮かび上がる。生と死と老い、夫婦の確執、甘酸っぱい回想、人生の儚さと哀歓、そして慈しみと希望と…それらはあたかも和紙に垂らした一滴がじわじわと滲みだすように、心を穏やかに潤す。登録数が極めて少ないがお薦めしたい滋味深い佳品。2020/11/19

新地学@児童書病発動中

102
「落葉小僧」とは南木佳士のことだと思う。表題作の中で、主人公の長吉が好きになる少女は、木から葉が舞い落ちるのを見て、自らの命を絶ってしまう。長吉自身も舞う落葉を怖がり、父から「落葉小僧」と言われる。落葉を見て、命の儚さを感じる繊細さは、この世を生きてうえで邪魔になるものかもしれない。しかし、南木佳士はその繊細さを捨てなかったので、医者でありながら、小説を書く表現者になったのだろう。「落葉小僧」は父と息子の関係、地方の衰退、ほろ苦い初恋の思い出、自然の美しさなどいろいろな要素が詰め込まれた傑作。2016/09/17

KEI

33
読友さんのレビューで知って。表題作を含む6編の短編。「落葉小僧」の鮎釣りに始まり、「フナを釣る」「ニジマスを釣る」「ヤマメを釣る」「金印」と釣りをする人々が登場する。私は釣りはした事が無いが、釣りをする人々はその佇む中で様々なな人生の悩みや喜びを抱えている。著者が医師であり、佐久に住まれているので舞台は信州かなと思う。ドラマティックな内容では無いが、人の生死、夫婦の確執、孫への想いが鮮やかに描かれていた。家族の再生を描いた「フナを釣る」が良かった。読了した方が少ないのは残念だと思う。2021/11/17

Makoto Yamamoto

14
6篇からなる短編集。最初の「落ち葉小僧」と最後「金印」を除いて釣りをイメージする題がついているが、信州の山奥に川と川魚と生きる人たちを描いている小説。登場人物が繋がっているのは最初と最後の長吉を中心とする編だけで、他は繋がっていないが、各々の思い通りに行かない人生をシッカリ描き切っていると思う。 30年くらい前の作品なので、それを頭に入れればスッと入ってくる。2021/01/08

なつのふね

10
6編の短編からなる。最初と最後の短編のみ 同じ主人公で話がつながっている。どれも 作者そのものを想定させる主人公で 山村で医師をしながら趣味は川釣りという生活か淡々と綴られる。地味なようで 結構 色んな国の人たちが出てくるし 生きて行く上でのやりきれない気持ちや (さすがに医師と感じたが)当然のように人助けをする姿勢など 描写されていて この人にしか書けない作品だなと思った。美味しい料理や 派手なトリックはないけれど いかにも 純文学と言える傑作なのではないかと思う。2016/11/28

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