出版社内容情報
項羽と劉邦。ふたりの英傑の友、臣、敵の目に映ずる覇王のすがたを詩情あふれる文章でえがきつくす五つの物語。著者最愛の連作集
内容説明
楚漢戦争とよばれた項羽と劉邦のたたかいは混乱をきわめ、臣下は主にそむき自らの利に奔ってなお不名誉とされなかった。貴族の血胤たる項羽にたいし平民出身の劉邦。しかし帝位は天が命ずるものである。本書は、覇をあらそうふたりの英傑のすがたを、友、臣、敵の眼に映ずるまま、詩情ゆたかに描いた名篇集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
94
項羽と劉邦の外伝のような短編集。特に劉邦を支えた功臣たちの描写が優しい。漢文をもう少し勉強すれば、原書で読めたのか?2010/06/12
KAZOO
71
表題作以下5編の短編集が収められています。連作のような感じもします。項羽と劉邦に関係があるあまり有名ではない人物が主人公になっています。その人物たちによって項羽と劉邦のすがたが浮き彫りにされます。宮城谷さん本来の中国関連の短編集ですが、やはり読んでいて司馬さんを思い出しました。2015/07/04
ふじさん
66
楚漢戦争を戦った項羽と劉邦の二人の英傑の姿を臣、友、儒者、子、敵の眼を通して描いた詩情豊かな短編連作集。それぞれの短編は独立して読めると同時に、相互に関連させ項羽と劉邦の生きた時代をみごとに描き出していく。出てくる人物は個性的で、二人の英傑にかけるそれぞれの思いが丁寧に描かれており面白かった。項羽と劉邦については、魅力ある人物だと改めて思い知った。司馬遼太郎の「項羽と劉邦」を再度読み返してみようと思った。 2020/09/28
糜竺(びじく)
43
古代中国の国の「漢」の初代皇帝の劉邦と関わった歴史上の脇役達の五人をそれぞれ主人公にした短編集です。直木賞作家の宮城谷昌光氏だけあって、味わい深い作品ばかりでした。個人的には、陸賈に一番感情移入できました。彼は儒者で、戦いでは一人の首級もあげられなかったのですが、劉邦が皇帝になり平和になった世では、良い政治が出来るよう手助けし、儒学嫌いの劉邦に「馬上で天下をお取りになっても、馬上で天下をお収めになれましょうか」と名言を放ちます。勝手ながら、まだ、陸賈が人間的に自分のタイプに近かったので引き込まれました。2014/08/22
明智紫苑
35
再読。あたしゃ、宮城谷氏の作品世界の女性観や女性キャラクターたちが苦手なのだが、この楚漢戦争短編集は必要最低限の女性キャラクターしか出てこないので、安心して読めた。この中では劉邦の息子が主人公の話がオススメだが、いわゆるエディプスコンプレックス的な要素が塚本靑史氏の小説(あたしゃ、お二方を比較せざるにいられないのね)ほど変な臭みがなくて良い。宮城谷さんも塚本さんも、色々と極端なんだよね。今は亡き陳舜臣さんのバランス感覚は良かった。2017/05/08