文春新書<br> 医学部

電子版価格
¥896
  • 電書あり

文春新書
医学部

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 新書判/ページ数 208p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784166611515
  • NDC分類 490.7
  • Cコード C0295

出版社内容情報

東大をしのぐ難関となった裏で、モチベーションの低い学生と不祥事が増加……「高収入、安定」の登竜門のリアルを赤裸々に描く!東大をしのぐ高偏差値化の陰で進む「白い巨塔」の危機!

モラル低下、大量留年、レイプ事件、しのびよる「医師余り」時代、医師に向かない学生の急増……



受験生の医学部人気はすさまじい。「医師になれば食いっぱぐれがない」「地位安定、高収入」という幻想が流布し、地方国公立大医学部≧東大(理?以外)、私立医学部底辺校≧早慶、が常態化している。

だが、高偏差値の学生がこぞって医学部を目指すようになったことで、医学部には大きな質的変化が起きている。やみくもな偏差値競争の結果、明らかに医師に向いてない学生までもが医学部に来るようになっている。医学界には「東大医学部の学生の3分の1は医師に向いていない」と指摘する声もある。学力は高いが医師という職業へのモチベーションが低い学生が大量留年してしまう現象も目立っている。

また、モラル低下も目につく。ここ数年、医学部の研究不正や患者多数死亡事故が相次いで発覚し、大問題になった。さらには医学生や若手医師が関与したレイプ事件や覚せい剤事件なども発覚している。こうした現象と医学部の超難関化が、まったく無関係とは言い切れない。受験エリートばかりの多様性のない環境の中で、他者の痛みを理解できない医師が育ったとしても、不思議ではない。

そもそも医学部は「職業訓練校」である。学問の追究というよりは、「手に職をつける」場所だ。サイエンスやハイテクの最前線ではなく医学部に理数系の人材が向かうということは、日本の将来にとって深刻である。

さらに深刻なのは、「医師余り」時代の到来だ。人口動態の変化と医学部定員急増、さらにはAIの台頭によって、近い将来、医師がワーキング・プアになってしまう可能性すらある。今現在は魅力的な職業に見えても、近視眼的な考えで学生が進路を決めてしまったら、大間違いをおかすかもしれないのだ。

本書はそうした医学部受験熱の盲点をえぐるだけでなく、東大医学部の凋落、「医局」の弱体化とヒエラルキーの崩壊など、医学界で起きている変化も詳述。さらに医学部を目指す人々のために、医学部6年間のリアル、「医師に向く人、向かない人」、現役医師や医学部教授が求める人物像なども紹介する。

鳥集 徹[トリダマリ トオル]
著・文・その他

内容説明

もはや東大をしのぐ難関と化した医学部。「勝ち組」をめざす受験エリートたちがしのぎを削る。だが、高偏差値化の陰で「医師に向かない学生」が増加し、モラルとモチベーションの低下が進む。そして「医師余り時代」の到来…。権威崩壊の内実を赤裸々に描く!

目次

第1章 東京大学医学部の凋落
第2章 「医局」の弱体化
第3章 医学部ヒエラルキーの崩壊
第4章 医学部とはどんなところか?
第5章 ゆがんだ医学部受験ブーム
第6章 医者に向く人、向かない人

著者等紹介

鳥集徹[トリダマリトオル]
ジャーナリスト。1966年兵庫県生まれ。同志社大学大学院修士課程修了(新聞学)。会社員、出版社勤務等を経て、2004年から医療問題を中心にジャーナリストとして活動。タミフル寄附金問題やインプラント使い回し疑惑等でスクープを発表してきた。15年に著書『新薬の罠 子宮頚がん、認知症…10兆円の闇』(文藝春秋)で第4回日本医学ジャーナリスト協会賞大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

アキ

115
2018年発行。東大理Ⅲの偏差値は72.5。河合塾の模試で上位1.2%以上に相当する。東大医学部卒の教授は1980年代19医学部の51%を占めた。しかし論文業績よりも臨床重視の教授が求められるようになり2017年には19%と低下した。受験で優秀なものが手術が上手い訳ではない。むしろチーム医療が重視される現場で、コミュ力が乏しいとトラブルになりかねない。あくまで医学部とは職業訓練校に過ぎない。欧米ではバイオサイエンスを目指し、ベンチャー企業を志し、手に職をつけるためメディカルスクールに進学することが多いと。2023/02/23

hatayan

49
2010年代の医学部の事情を広く薄く解説。 地方の国立大が自立しつつあることにより東大の権威は相対的に低下、出身大学ではなく実力がものをいう時代に。象徴的だったのが上皇の心臓手術に東大が順天堂大の天野篤医師を執刀医に招いたこと。難易度が高くなる一方の医学部ですが、単に成績が優秀だからではなく人の生命と向き合う志を持つ者が目指すべきだとします。医師とて安泰ではなく、2030年から40年代にAIが人知を上回ると予想される「シンギュラリティ」を前に、医師の仕事の大半はAIに取って代わられるのではと予想します。2020/04/21

rico

27
いつごろからだっけ、医学部に進む=頭がいい、の証明のようになってしまったのは。頭がよくても適性がなければ、医者も患者も不幸だ。本書は、そのような入試のゆがみも含め、医学部の歴史や現状、課題などをわかりやすくまとめている。帯に赤字で書かれたコピーは過激だが、内容はオーソドックスで読みやすい。「高度な職業訓練校」という表現は秀逸。とはいえ、最近も医療ドラマが人気を呼んだり、入試をめぐって不正が行われたり・・・医者のステータスは当分ゆるぎそうにない。2018/07/05

アルカリオン

9
「医学部」に関係する雑多なトピックを週刊誌的に取り上げた本。以下、一部要旨▼以前は高学力者が目指すのは東大だったが、最近は医学部になっている。国公立の医学部は多くが東大の他学部と同等以上の難易度となった。私立も難易度が上昇しており、難易度最低の医学部でも上智の理工学部レベルである▼地方の国公立大学医学部入学者に占める首都圏出身者の割合はかなり高くなっているが、卒業後の定着率は低い▼自分の子供も医者にしたいと思う医者が多い。そういう人は、教育環境の劣った僻地にはなお行きたがらない。2019/02/01

Prince of Scotch

9
非常に興味深く拝読。これから医学を志す人には本書後半の第四章から第六章までを精読することで、医学部の現状と未来とが俯瞰的に把握できるのでは、と感じた。医学部は高いモチベーションが必要な「職業訓練校」と著者である鳥集氏は定義する。学力試験で高得点のみを誇る所謂「偏差値秀才」ではなく、不断の勉強や努力を苦としない、バランスのとれた人格を有する人材こそが医師に望ましい、と述懐されているが、同意をしたい。2018/08/16

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/12731080
  • ご注意事項