内容説明
一九一二年のストックホルム五輪に日本人として初めて参加した「日本マラソンの父」金栗四三以降、日本は傑出したランナーを数多く輩出してきた。孫基禎、田中茂樹、君原健二、円谷幸吉、瀬古利彦、宗茂・猛、中山竹通、谷口浩美、森下広一、有森裕子、高橋尚子―。時代の変化、周囲の期待、そしてランナーの意思。彼らが闘ったレースとその肉声に迫りつつ、日本マラソン百年の変遷を辿る。「日本人の精神史」に通じる、出色のスポーツ人物列伝。
目次
第1章 坂の上の雲―金栗四三
第2章 苦い勝利―孫基禎
第3章 アトムボーイ―田中茂樹
第4章 完走者―君原健二
第5章 貴公子―瀬古利彦
第6章 朗らかランナー―谷口浩美
第7章 復活―有森裕子
第8章 ジョガー娘―高橋尚子
著者等紹介
後藤正治[ゴトウマサハル]
1946年、京都市に生まれる。京都大学農学部卒業。ノンフィクション作家。『遠いリング』(岩波現代文庫)で講談社ノンフィクション賞、『リターンマッチ』(文春文庫)で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鈴木拓
22
百年にわたる日本マラソン界の歴史を振り返ると、数々の名ランナーが存在していた。本書は、その中から八人を厳選し、それぞれのマラソンに対する取り組み方や、その半生を紹介したもので、42.195キロを走るというある意味では非常に原始的な競技に、これほどのドラマがあるのかと心を揺さぶられた。2022/02/28
鈴木 千春
3
金栗四三・孫基禎・田中茂樹・君原健二・瀬古俊彦・谷口浩美・有森裕子・高橋尚子 8人のマラソンランナーと同時期の人々を著者がインタビューしての所感だった。 あまり知らなかった古い時代の四人の話で、時代の不幸について考えた。 が、女子ランナー達の章になって、疑問を感じた。 人柄は、あくまで著者の感想なのかと違和感有り。 これは、古い時代の四人についてもあやしい。 四人についての他の本を読まなきゃ! そんな意味で読書欲を促してくれる良書か(笑)2022/03/08
清田
2
★★★★☆ 金栗四三から高橋尚子までのマラソンランナーについてまとめたもの。金栗の次にあたる、孫基禎以降はすべて著者が本人に取材をし、かつ円谷幸吉の生きざまについて尋ねているのが特徴。彼・彼女らを通じて、マラソン、オリンピック、ランナーとしての在り方とその変遷をたどっている。また孫基禎をめぐる記述は、慎重かつ言葉を選んでいる。孫は日本代表男子で唯一の五輪金メダリストでもあると共に、日本統治時代の朝鮮人(※)だからだ。日本史の教科書で、「日章旗抹消事件」における孫の表彰式の写真をみた方もいるだろう。2022/04/09
海野
2
日本のマラソン黎明期〜高橋尚子選手までを1本の糸で繋げて書かれている。糸は各時代におけるメダルの重さ。 マラソンが国の威信を背負っていた時代から、1個人の記録として解放されるまでどのような葛藤があったかを、それぞれの選手へのインタビューを元に語らせている。 ただその内容はやや綺麗過ぎる趣があり、実際にはもっとドロドロとした事情があったのではないか、と邪推してしまうところも多い。 孫基禎選手の事は初めて知ったので勉強になった。2016/05/14
rikoxyma
1
明治から現代にかけて活躍したランナーたち。彼らをつうじて日本人の精神の変遷の一端が垣間見える。2017/08/12