出版社内容情報
封印された記憶、摩訶不思議な事件、倒錯の性……夢とも現実ともつかぬ男女の因縁を徹底透視し、円熟の筆と技巧が冴えわたる佳品集。
官能×文学、作家生活四十年の到達点がここに――
本書の作者である勝目梓は、若き日に「文藝首都」にて中上健次らと研鑽を積み、かつては芥川賞候補にも挙がった。その後エンターテインメントに転向、1974年、小説現代新人賞受賞作「寝台の方舟」でデビューすると、バイオレンスロマンの第一人者として一世を風靡し、一ヶ月に執筆枚数が800枚を越えたという昭和のレジェンドである。
しかし、その創作意欲は衰えを知らず、近年は『小説家』『老醜の記』など私小説でも高い評価を受けた。そして80歳を超えてなお円熟味と凄みを増している作家・勝目梓が「おそらく生まれて初めて書いた不思議な作品」、さらに「私にとって最後の作品集」と語り、デビュー40周年記念作品として刊行されたのが本書である。
その言葉通り珠玉の十篇を収めたこの作品集は、官能と文学の新境地をさらに切り拓く一冊だ。ある者はこの世に起こり得ない不思議と遭遇し(「万年筆」「あしあと」)、ある者ははるか彼方に封じていた記憶を呼び起こし(「記憶」「橋」)、ある者は倒錯の性に搦めとられていく(「人形の恋」「影」「秘技」)……。
作品の年代は戦前から現代までと様々だが、作者自らが目にしてきた時代をそれぞれに切り取り、作品の奥行きをさらに広がってゆく。いずれも夢とも現実ともつかぬ時空を自在に往来し、エロスを妖しく漂わせる、まさに名人芸の粋に達した佳品ばかりだ。作家の逢坂剛氏も「創作意欲の衰えなどみじんも感じさせぬ、逸品ぞろいの作品集に仕上がった。勝目さんの小説は、とても傘寿を超えた作家とは思えぬほど若わかしく、清新な感性に満ちあふれている」(文藝春秋「本の話」)で惜しみない賞賛を送っている。
短篇小説を極めた本物の作家、渾身の作品集が見事に誕生した。
著者等紹介
勝目梓[カツメアズサ]
1932年東京に生まれる。様々な職業に就きながら、同人誌『文藝首都』の同人となり小説を発表。1974年に「寝台の方舟」で小説現代新人賞を受賞。以後、バイオレンス、サスペンスをはじめとする幅広いジャンルで活躍、2006年には初の自伝的小説『小説家』を発表し、各誌紙で絶賛された(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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