• ポイントキャンペーン

米軍が恐れた「卑怯な日本軍」―帝国陸軍戦法マニュアルのすべて

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 329p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784163754802
  • NDC分類 391.26
  • Cコード C0095

出版社内容情報

沖縄戦の直後に作成された米陸軍の対日戦最終マニュアル書「卑怯な日本軍」が描く帝国陸軍の姿は真実の姿なのか、単なる偏見なのか

太平洋戦争(大東亜戦争)末期の1945年8月に、新兵向けに配布された米陸軍の対日戦用マニュアル書「卑怯な日本軍」が本書の「テーマ」です。真珠湾の騙し討ち以来の「卑怯」という対日イメージを強調し、日本人の姿格好などに対する差別的なイラストも満載のこの文書に描かれた「日本軍」のイメージは正しかったのか? 死んだフリをして近づいてきた米兵に手投げ弾を投げたり、英語をしゃべって友軍のようなふりをするから警戒せよ…といった「変装策略」など、微細に「卑怯な日本軍」の手法を図解入りで説明もしています。
というのも、欧州方面ではドイツの降伏により戦争も終わり、ベテラン兵は除隊となり、実戦経験の乏しい新兵を日本との地上戦にも投入する可能性が高かったため、手っとり早く日本軍の「戦術」を教え、敵としてのイメージを増幅させるためのハウツー書が必要だったわけです。ちなみに、同書の挿絵はアメリカの漫画家サム・コービンによるもので、日本人をみんな同じ顔に描くことで「ヒトよりも下等で、嫌悪感をもよおすもの」(ジョン・ダワー「容赦なき戦争」)と「定評」のあった人です。
埼玉大学准教授で、新進気鋭の戦史研究家でもある一ノ瀬俊也さんが、その内容を精査しつつ、実は日本軍はそうした「卑怯な戦法」を大陸との中国軍との戦闘で学んだ事実も解明していきます。この「卑怯の連鎖」は、なかなか歴史の皮肉を感じさせもします。
卑怯を強調しつつも、その反面、よかれ悪しかれ、日本軍が怖い、強い存在であると畏怖もされていたわけですが、そうした米軍に畏怖された日本軍の虚実が本書によって初めて明らかにされます。

はじめに 

第一章  アメリカ軍の見た日本軍「対米戦法」の全貌 
これが君の敵だ/策略のかずかず/米軍将校の回想/死んだふり/友好的な敵/なりすまし/羊の皮を被った狼/民間人と区別できない/内通者/欺騙戦術/「くそ海兵隊」/強く見せかける/弱く見せかける/忍び込み/通信に介入/対抗策/待ち伏せ/狙撃兵/狙撃戦法/ダミーの狙撃兵/偽装とダミーの設置/ダミーの兵器と陣地/対人地雷/即製地雷の数々/仕掛け爆弾/手榴弾による罠/爆発する食料雑貨/記念品ハンターよ、注意すべし/その他の引力作動型の罠/電気作動型の罠/『卑怯な日本軍』からわかること

第二章  日本軍「対米戦法」の歴史――中国戦線編
日中戦争期の日本陸軍歩兵戦法/射撃を嫌がる歩兵/小銃軽視?/自己説得としての「剣術」礼賛/夜襲は困難だった?/取り入れられた火力の戦訓/砲兵との呼吸が合わない/狙撃兵の能力/「卑怯な中国軍」/成功ゆえの懸念/「皇軍独自の肉迫攻撃」/捕虜「処断」を指示/市街戦の「教訓」/ノモンハンの戦訓/『戦死傷の教育的観察』/地物利用の不徹底/中国戦線の経験

第三章  「対米戦争」の歴史――南方戦線
戦前の日米相互評価/英米軍が緒戦で得た「教訓」/通用しない典範令/評価の高い参謀の手記/米軍の機械化戦法/米陸軍の空爆/〝人名〟への着目/昭和一七年の「対ソ戦法」/昼間の「進攻主義」は無謀なり/対ソ戦法は夜襲し
かない/長、夜襲への疑念に激高/「対ソ戦法」は実在したのか?/米軍陣地突破は不可能/『敵軍戦法早わかり』/艦砲射撃の威力/米軍の弱点は何か/水際迎撃に固執した?/部隊・国民の反応/「戦訓」と下ネタ/日本軍、米軍の「対日戦法」を入手/米軍上陸現場の対応──ペリリュー島の事例/「凡ゆる手段方法を以て、多くの敵を殺す」/大本営参謀たちの自己説得/日米それぞれの思惑/『挺進奇襲の参考』/軍犬処理法/斬り込み/沖縄戦/自己説得

第四章  対米戦法の主力兵器――地雷・仕掛け爆弾
「手榴弾が一番好い」/優秀な中国軍手榴弾/中国軍の仕掛け爆弾/地雷に怯える日本軍歩兵/「地雷の死は余りにも酸鼻である」/防御に巧みな中国軍/中国軍の手榴弾/手榴弾への対抗策/中国軍・ソ連軍の仕掛け爆弾/満州事変と地雷/ニューギニア戦線/爆破戦闘/地雷でも劣勢の日本軍/兵器の遅れ/ソロモンの日本軍地雷/地雷は怖い/ビルマ戦線/無力な日本軍の地雷・爆弾/兵士を「地雷」視する/セブ島の地雷・仕掛け爆弾/日本側の記録/米・アメリカル師団の報告書/セブの洞窟陣地/アメリカル師団の総括/米軍の収集した地雷情報/情報の集約と周知/地雷で飛行機を撃墜/工夫された急造地雷/米軍兵士の畏怖/自衛隊の仕掛け爆弾

おわりに
あとがき
参考文献一覧
関連年表

内容説明

「卑怯な軍隊」の本家・元祖は何処の国?米軍が太平洋戦争末期に刊行した『卑怯な日本軍』を読めば、彼らが日本軍の不意打ち、地雷、仕掛け爆弾といったゲリラ戦術の数々を警戒していたことがわかる。米軍はそのような手を使う日本軍を「卑怯」と指弾したが、裏を返せば怖がっていたのである。だが、その「卑怯な戦法」を日本軍は大陸の中国戦線で「教訓」として学んでいった。となると…?知られざる国家間の対敵国用「戦法」「戦訓」マニュアル・策略等々の奇妙な連関を読み解く快著。

目次

第1章 アメリカ軍の見た日本軍「対米戦法」の全貌(これが君の敵だ;策略のかずかず ほか)
第2章 日本軍「対米戦法」の歴史1―中国戦線編(日中戦争期の日本陸軍歩兵戦法;陸軍は火力軽視ではない ほか)
第3章 日本軍「対米戦法」の歴史2―南方戦線編(戦前の日米相互評価;英米軍が緒戦で得た「戦訓」 ほか)
第4章 日本軍「対米戦法」の主力兵器―地雷・仕掛け弾爆(「手榴弾が一番好い」;優秀な中国軍手榴弾 ほか)

著者等紹介

一ノ瀬俊也[イチノセトシヤ]
1971年福岡県生まれ。九州大学大学院博士後期課程中退、博士(比較社会文化)。国立歴史民俗博物館助教を経て、埼玉大学教養学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

この商品が入っている本棚

1 ~ 1件/全1件

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

スカイバニラ

14
日米両軍の対敵戦法マニュアルから日本軍がどのような戦術で米軍に対抗したか、その日本の対米戦マニュアルの元となった対中国軍マニュアルも紹介して対米戦法の成り立ちと、日本軍の戦法に対する米軍側の評価を紹介。地雷や手榴弾を利用した仕掛け爆弾といった罠や、日本軍の狙撃手とその戦法に関する記述と、第二章の日本陸軍の中国戦線での報告書から夜襲の困難性についてや砲兵と狙撃兵に対する評価等が興味深かったが、肉弾という自軍兵士の命を投げ出す戦法で対応せざるを得なかった日本兵の方々の事を思うと何ともコメントしようがないです。2012/09/30

Toska

7
再読。日米両軍のマニュアルと戦訓集を通して日本軍の実像に迫る試み。日本は国力・科学力で大きく劣ることを自覚しており、冷静で客観的とさえ言える自己評価なのだが、そこから一周回って「精神力で勝つ」の方向に進んでしまった。正しい認識が正しい学びにつながるとは限らない。特に、「アメリカは民主主義だから、米兵をたくさん殺せば泣きを入れてくるはず」との主張には唖然とする。完全にテロリストの思考ではないか。2022/02/26

遊々亭おさる

7
太平洋戦争末期の日米の戦法を比較して解説した一冊。大本営が立てた一見、客観的に見えるが希望的観測に満ちた今からみればブラックユーモアのような大局をもとに作られた戦法マニュアルをもとに、物資も軍事も日本のそれと比べるべくもない巨大国家アメリカに勝てる見込みのない人命軽視のゲリラ的戦法で立ち向かうしかない日本の兵士。戦争の悲喜劇がここにある。しかし、当時の日本軍を後生の僕たちは笑うことは出来ない。なぜなら、同じようなマニュアルがそこここで散見されているだろうから。2013/01/19

Madoka.@書店員復帰を目指し中!

6
帝國陸軍の戦法を見て驚きの連続だった。勝つためには他国の敵に卑怯と言われてもやるしかないのかもしれない。読んでいて感じたのは戦いの知恵である。今まで海軍しか興味が無く、海軍の戦法しか勉強していなかったので新鮮な気持ちになった。2013/04/18

shimojik

4
示唆に富んでるなあと思った。最終決戦前の、日米双方の味方向けのプロパガンダが「日本は弱者を殺す」で一致していたということに寒気を感じる。個々の物語が一致したら結末するのか。上の決めたマニュアルで現場が混乱し、現場で醜態を省みない工夫が行われるのは古今東西同じ。2014/05/24

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/5148977
  • ご注意事項