内容説明
壱岐水道を望む入江にひっそりと佇む「蓬莱島」。古来ツクヨミの民が住み、その秘められた信仰の舞台となったこの島を訪れた夫婦を待ち受けるものは…？『聖水』でストーリーテラーとしての才能を高く評価された著者待望の受賞第一作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えみ
17
古来の信仰を模した怪しい宗教団体なのか。将又本当に死者が還る場所なのか。月夜見の島での儀式が今大切な人を亡くし哀しみの底に沈んだままの心、救いを求める人々に呼応する。怪しすぎるセミナー。愛犬が死んだことで心を病んでしまった妻が望み、彼女の付添人として夫もその怪しげなセミナーに参加するが…。若干のホラー要素があり、生と死の狭間で迷う心に喪失感を持った者達の辿り着いた救いの島の話。終始不穏な空気が漂う。最後に真の目的が明かされるまで、失うことで不安定になった人々の譫妄を伴った心の動揺が描かれる。地味に怖い。2019/12/17
Suu.
7
死者に再会できる小島･蓬莱島という魅力的な背景から窺うに､どのような話筋なのか期待に胸を膨らませて頁を捲るのだが､どうも中途半端にホラー色を滲ませている様子の違和感から､筆者が何を一番に読者に求めているのかについては今も曖昧さが残り､消化不良なままだ｡主題と察する生死について､熟考する暇を与えられなかった事が残念なものの､飽くこと無く物語に熱中させる筆力は素晴らしく､他の作品を読んでみたいと思わせるのだから参った｡2013/09/23
Maki Uechi
2
★★★☆☆ 途中まで面白く読んでいたのだけど…ラストに肩透かしを食らったような感じ。2016/02/04
gurisan
1
★★★☆☆ 失ったもの（人）が還る場所があるー大切な人を亡くしたことのある人ならば、飛びつきたくなる。信仰宗教か怪しい団体か。目当ては何か。訝しげながら、愛犬を亡くしせ精神を崩した妻のつきそいで癒しのセミナーに参加する長瀬。だんだんと、月夜見の儀式に飲み込まれていきながら、日常を捉える。「この世よりもあの世の方が近いんだ」。老人の言葉に共感。生きているものも死者も職業や暮らしの差も、すべてない境地に連れていかれ、そこから戻る。不思議な体験。2009/09/03
miroku
1
取り残される悲しみ。 切ない思い・・・。2009/06/05
