出版社内容情報
のがれがたい血の宿命のなかに閉じこめられた若者の、癒せぬ渇望と愛憎を鮮烈な文体で造形して、広く共感と衝撃を与えた野心作。今期芥川賞候補作。表題作他三篇
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
びじにゃん
3
複雑な家庭、貧困、狭い人間関係。大人になりかけの主人公の焦りや、満たされないものに対する渇きが伝わって、喉の奥がヒリヒリするような作品だった。2018/03/21
だんごや
3
私は中上健次をほとんど知りませんが、先日たまたま、作品の舞台である新宮・熊野に滞在したので読むことに。新宮の町はあの時代からだいぶ変わっているのでしょうが、それでも手に取るように感じられました。あらすじ自体は「日本のどこの田舎町でも成立するストーリー」ですが、あの土地のたとえようのない凄みを言葉にくるめて注ぎ込んだ、業の深い作品です。読後にぐったり疲れました。このまま「枯木灘」も読むしかありませんね。2016/06/04
あかふく
3
父の精子からなる者は父に属する何かなのか。父を代理する何かなのか。そういった疑いを読むならば、「黄金比の朝」における「占いの婆」の連鎖や英単語帳の昨日を意味するものと意味されるものの関係で見、最後の「鏡」にまとめることができる。しかしそれを振り切ることはできないのかもしれない。「岬」では、最後に近親相姦が行われるが、そこで打たれる読点は身体のよじれと呼応している。文字という意味するものは、決して純粋なものではない。2013/08/17
リヅ
1
中上健次作品にしてはそんなに当たらなかったかな…。*22009/06/25