内容説明
軍用有人兵器・機甲兵装の密輸事案を捜査する警視庁特捜部は、北アイルランドのテロ組織によるイギリス高官暗殺計画を察知した。だが特捜部には不可解な捜査中止命令が。国家を超える憎悪の闇は特捜部の契約する“傭兵”ライザ・ラードナー警部の、凄絶な過去につながっていた―組織内でもがく警察官たちの慟哭と死闘。圧倒的なスケールと迫真のリアリティで重厚に描く、話題の“至近未来”警察小説。
著者等紹介
月村了衛[ツキムラリョウエ]
1963年生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。在学中、清水邦夫、高橋玄洋に脚本・演劇を学ぶ。卒業後予備校講師として現国・古文・漢文の教鞭を執る。1988年『ミスター味っ子』で脚本家としてデビュー。2010年『機龍警察』で小説家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サム・ミイラ
143
なぜかこのシリーズ遡って読んでいるのだが、なるほど皆様のレビューの通り回を追うごとに面白くなっているなと納得。いやこれも十分以上の出来だが架空の設定はやや拙い印象を受ける。例えばIRF例えばアゲン。血の日曜日は実際の出来事なのでそのままIRAの派閥闘争でも良かったのではないかと思う。逆に敵役のキャラはシリーズ中一番立っていた。詩人キリアン・クイン。今作の成功はひとえにこの強烈な悪役に尽きる。今回はライザ・ラードナー警部の物語。次作はユーリとくればやはり姿警部の物語を読みたくてたまらない(笑) 2017/10/30
文庫フリーク@灯れ松明の火
125
この作品は何も賞を受賞していないのだろうか。近未来小説でありながら、圧倒的な現実感。読み易い文章に反比例する骨太な物語。一見無関係な描写が、伏線として次々と炸裂する後半部分は、してやられた感がとてつもなく嬉しい。主軸は龍機兵バンシーの搭乗員ライザ・ラードナーがテロ組織IRFの〈詩人〉キリアンに見いだされ、シリアでの訓練の果てに〈死神〉と呼ばれるようになるまでの過程と、ライザ自身の手で、妹のミリーという宝を砕いてしまう凄惨な過去。IRFの爆破テロにより父母と兄を失った龍機兵の技術班主任・鈴石の父の遺した→2014/08/04
こうじ
117
⭐️⭐️⭐️3/5 読み疲れたぁ〜^_^;ライザに対する過去がわかってしまうないよう。なんか切なかったなぁ。悲しみを背負っている分強くなれるのかな(*^_^*)2015/11/01
Shintaro
92
ドストの「罪と罰」を超え今月のベスト決定。警察小説と呼びたければ呼べ、SFと感じたかったら感じろ。伊藤計劃なきあと何を読むべきか、月村了衛の答えがここに在る。先人たちはモビルスーツやヴァンツアーと言ってきた、究極の有人兵器、機甲兵装、それを操るライザ・マクブレイド。閉塞した北アイルランドでテロの洗礼を受けた少女はさだめに従い兵士となった。来日したイギリス外務省サザートン卿暗殺を目論むRAFのテロリスト「詩人」ことキリアン・クイン。特捜部は彼らの計画を阻止できるのか。機甲兵装の軋みや硝煙さえ漂う傑作だった。2016/09/19
ALATA
73
機龍兵を擁する特捜部にIRFのテロリスト「詩人」「猟師」「墓守」「踊子」が対峙する。北アイルランドの過去ひきずるライザの悲しみが深い。今作は「中盤は奇術師の如く、大胆にかつ繊細に」戦局を読み合いする段は見事でした。相変わらず警察機構の軋轢に加え外務省の横槍を交わす沖津部長、最後に明かされる“自爆条項”の悩みは尽きないですね。★5※「血の日曜日」U2の唄で内容を知っていたがうまく脚色されてるなぁと感心しきり。2022/08/27