出版社内容情報
殺人に正義はあるか? 命に値段はつけられるか? 空前の「正義の哲学」ブームを呼んだサンデル教授の対話型人気講義。NHKで放送された全24コマのスクリプトに加え、安田講堂での講義も収録。
指名手配中の弟の居場所を捜査当局に教えなかった兄の行為は誉められるべきか? 日本の東アジア諸国への戦争責任やアメリカの原爆投下責任など、過去の世代が犯した過ちを現世代は謝罪すべきか? 論議を呼ぶテーマの向こうに見えかくれする「正義」の姿とは?
現代社会のアクチュアルな問いに切りこむ斬新な哲学対話が、世界の見方を大きく変える。知的興奮に満ちた議論は、感動のフィナーレへ。
下巻は、NHK教育テレビで放送された「ハーバード白熱教室」の第7回~12回まで、および2010年8月に行なわれた東京大学特別授業の後篇「戦争責任を議論する」を収録。
*上巻はこちら
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
zero1
71
【哲学は世界を変える?】下巻はカントの話から始まり、ロールズに。純粋理性や無知のベールなどの登場でかなり高度。入試で点数だけでなく黒人を受け入れるアファーマティブ・アクションは是か非か?弟が殺人者なら警察に突き出す?そして白熱したのが同性婚と中絶問題。マスターベーションの話で白熱しサンデルが止める場面も。後半の東大講義では戦争責任、特に現世代が過去の謝罪をすべきかを問う。オバマは原爆投下で謝罪すべき?日本は韓国と中国に対して謝り続ける?★哲学は不可能だが避けられない。考察に意味はある。何度でも読みたい。2019/10/19
ntahima
48
教授が次々と繰り出す究極の選択に酔い痴れながらも、何処かでコミュ二タリアンの本性を現し議論をそちらの方に誘導するのではないかと、やや懐疑的に読み進める。ところが議論は最終講に於いて意外な展開を見せる。「ほう、そう来ますか!」って感じ。これって上質な一編のミステリだね。探偵小説の種明かしを先に読んでも、そんなの当たり前だとか、納得できないってことになる。やっぱり12回の講義内容を時系列に読むしかない。読了済の小説でも映画化されて観れば又良し。次は講義の映像版を見よう!因みに私は今もコミュ二タリアンではない。2012/09/22
Gatsby
23
『これからの…』を既に読んだが、そこでも取り上げられたテーマが出てくるのと、授業でのライブ感があるので、この講義録の方が読みやすいようだ。難しく感じる部分もあるが、それは、問題には何か一つの答えがあるという考え方に取りつかれているからなのかもしれない。ここでの問題について考えるとき、「自分としての答えはこれである」と言うことではなく、なぜそう考えるのかが大切なのだと思う。そして、考え続けること。したがって、この本も一度読んだきりにしないで、繰り返し読むのがいいのだと思う。2011/01/20
SOHSA
21
学生との対話を通じて正義と善について探究していく過程がとてもエキサイティングで面白い。また、ハーバードの学生と東大の学生の考え方の違い、それはまさに日本的な思考とアメリカンな思考の違いだが、その差異が興味深い。現代の高校生、大学生に是非読んでほしい。思考の幅が間違いなく広がる。2013/04/10
takayo@灯せ松明の火
19
いつもは殆ど小説しか読まない私。いつもはお話の世界に感情のまま浸っているけれど、この本は「「一緒になって目一杯考え脳を使っている私」に浸って快感を感じるわ。本当は学生の時に、考える喜びを見いだしたかったけど(笑)コミュニティーに義務を負うか!という議論が面白かった。ハーバードと東大の学生では、微妙に違うスタンスのような気がしたけど、それが文化の違いなら、やはり国が個人のアイデンティティを形成している面もあるということだなあ。 2011/07/22