ハヤカワSFシリーズ
ハーモニー

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  • サイズ B6判/ページ数 354p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784152089922
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

内容説明

「一緒に死のう、この世界に抵抗するために」―御冷ミァハは言い、みっつの白い錠剤を差し出した。21世紀後半、「大災禍」と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は医療経済を核にした福祉厚生社会を実現していた。誰もが互いのことを気遣い、親密に“しなければならない”ユートピア。体内を常時監視する医療分子により病気はほぼ消滅し、人々は健康を第一とする価値観による社会を形成したのだ。そんな優しさと倫理が真綿で首を絞めるような世界に抵抗するため、3人の少女は餓死することを選択した―。それから13年後、医療社会に襲いかかった未曾有の危機に、かつて自殺を試みて死ねなかった少女、現在は世界保健機構の生命監察機関に所属する霧慧トァンは、あのときの自殺の試みで唯ひとり死んだはずの友人の影を見る。これは“人類”の最終局面に立ち会ったふたりの女性の物語―。『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。

著者等紹介

伊藤計劃[イトウケイカク]
1974年東京都生まれ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』にて作家デビュー、「ベストSF2007」国内篇第1位を獲得する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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紅はこべ

144
伊藤計劃個人の作品は本作が初めて。まず読み易さにびっくり。『屍者の帝国』が読み易くなかったのは、円城塔のせいだったのか。アニメ『PSYCHO-PASS』に設定が少し似ているかな。人がユートピアを目指そうとすると、ディストピアになってしまうのは必然か。人間性への不信感。老人達にとって、人類は全体的に、某芸人の言葉を借りれば、不良品なのかも。人間が意識を持たないことは、日本の現独裁政権にとって喜ばしいことなのかも。読んでいてゾクゾクした小説だった。「自らの身体が、そのまま自らの身体である世界」そうあってほしい2019/06/05

藤月はな(灯れ松明の火)

99
過剰なまでの思いやりと健康思想に支配されたある種のユートピア。まるで生きることを緩やかに強制されている様な世界に抗い、自死しようとした3人の少女。それから十年、抗おうとした世界に隷属していたかつての少女の周囲で染するような自殺が起こった・・・。緩やかに極端化される意志、それぞれ、異なる意志すらも害になりかねないまでになってしまったシステム。真逆の世界に行ったミァハが世界の狂いを感じたと述懐する場面がその事実の歪さを浮かび上がらせる。家畜のような人間とピークに達するシステムの極端化には凄く、気持ち悪かった。2013/08/07

おいしゃん

96
読友さんたちの多数が、去年一年間に読んだ中で一番良かった、とおっしゃっていたのでチャレンジ。ふだんSFの類は一切読まないので、はじめは入り込むのにかなり苦労し、いつ挫折しようかと考えていたが、テンポよく、するすると読了してしまった。同じく伊藤計劃の「虐殺器官」も、いつかチャレンジしたい。2016/01/27

ゲンショウ

77
虐殺器官に引き続き拝読。復讐…至って個人的な感情。その発露に人の尊厳を見た気がする。泣ける様な物語では無いが、哭いていた。人の意識は、百鬼夜行にも似た、有象無象の欲求と謂う混沌の淵から立ち上がるものと解釈され始めていると聞いた…。その場しのぎの意識…否、意識自体がその場しのぎの賜物。私個人的には、この考え方に救われた。人は、蟻や蜂の様な調和を得られるのか…?蝗の様な害となるのか…?いずれにしても、この世の理の内。著者の早逝を悼みます。2013/04/14

Mumiu

72
映画から。パッセンジャーバードほか映像が綺麗だった。反則気味だが文字だけではイメージしにくかったものもすんなりはいってくる。多くの人口を失って地球規模でほぼ実現された争いがなく平和で、疫病などを畏れる必要のなくなった世界。健康が全てに優先される「生府」に支配される世界。指導者たちが描くユートピアの行きつく先は?!枠に収まりきらないマイノリティーは?!あちらこちらに暗示を見ながら閉じる。トァンのファミリーネームが「霧慧(キリエ)」わたし的には”Kyrie”。頭の中でフォーレのレクイエムが流れっぱなしでした。2016/04/06

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