内容説明
パリ、ローマ、フィレンツェ、ロンドン、東京―。失われた名前を求めて世界を飛びまわるミニチュア蒐集家と女たちとの官能的な世界。鬼才が放つアルカイックな幻想小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぞしま
14
素晴らしかった。私が読んだキニャールの内、現代が舞台なのは初めてで、読みやすかった気がする。主にロランスに感情移入しながら。対話、そこに付随する描写に目を奪われた。多様な固有名詞は目を眩ませ、獣性と箴言は溶け合う、目や耳や鼻や手足に忠実な感覚から吐かれる言葉、吐かれない言葉、あるいは"舌の先まで出かかった"言葉…。倫理は埒外に存し、教義や教養や審美眼も同様。ある種の「異様な強度」で彩られた行い、それにより興される感覚と記憶…ついて行くのがやっとなようで、初めから振り落とされているような気もする。2016/02/06