内容説明
医者のマーチ博士の広壮な館に住み込むメイドのジニーは、ある日大変な日記を発見した。書き手は生まれながらの殺人狂で、幼い頃から快楽のための殺人を繰り返してきたと告白していた。そして自分はマーチ博士の4人の息子―クラーク、ジャック、マーク、スターク―の中の一人であり、殺人の衝動は強まるばかりであると。『悪童日記』のアゴタ・クリストフが絶賛したフランスの新星オベールのトリッキーなデビュー作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
徒花
256
まあまあ。マーチ博士の家に暮らす殺人犯の手記と、その手記を見つけてしまった家政婦の日記が時系列に沿って交互に繰り広げられることで進展していくサスペンス・ミステリー。学がないジニーが犯人を追及するために勉強し、次第に文章に知性が備わるようになったり、ジニーに対してさまざまに心境を変えていく殺人犯の文章表現は確かにおもしろいのだけど、もうすこしコンパクトにしたほうが読後感がさらに良かったかもしれない。どんでん返し系だけど、叙述トリックではない。2018/04/01
ちょろこ
129
二人のゲームに惹きこまれた、一冊。ある日、医者のマーチ博士の屋敷に住み込むメイドのジニーが発見した、世にもおぞましい殺人日記。しかも日記の書き手はマーチ博士の四人の息子の一人らしい。そこから始まる、日記形式で綴られるジニーと殺人鬼息子の頭脳ゲームのような時間。尻尾をつかもうとあの手この手で攻めるジニー。あの手この手で惑わす殺人鬼。一体誰が殺人鬼なのか知りたい欲はどんどん高められるし、次第にジニーを応援したくなる…と、とにかく一気読みで惹きこまれる作品。オチはなるほどね…。うん、面白かった。2020/05/28
茜
111
物語は「殺人者の日記」と「ジニーの日記」の交互で進んでいく。途中からジニーの日記が見つかってしまいお互いに警告合戦になってしまっていたけれど、殺人者が誰なのか早く知りたくて読了しました。最後にジニーが取った確実に告発する方法にはアル中のジニーにしては素晴らしいアイディアだと思った。2021/03/18
うまる
50
トリッキーなミステリ。住み込みメイドが殺人狂の独白日記を発見するが、4人の息子のうち誰が書いたのか?殺人者とメイドの日記が交互に進んでいく展開が面白いです。いったい誰なんだという謎がとにかく気になるので、読むのが止まりませんでした。エピローグまで読み、全ての謎が分かった後で良く考えると、あれも伏線だったのかという驚きがありました。そして表紙を見るとあぁぁぁ!ってなります。翻訳は殺人者分とメイド分で別の方がされたそうで、それが2人のやりとりの面白さに一役買ってるのかもしれません。2019/12/26
蘭奢待
49
博士とその奥さん、四人の息子が住む屋敷にお手伝いとして入った家政婦ジニー。ひょんなことから自分は殺人鬼であることを告白した日記を発見する。書き手は四人の息子のうちの1人。家政婦と殺人者の攻防が始まる。 結末で全てのトリックが明かされる。久しぶりに読んだミステリーはお手盛り感満載だが一気読みできた。 訳者解説によると、アゴタクリストフ推薦とか。2019/06/23