内容説明
アガサ・クリスティーの夫マックスは、著名な考古学者であった。しばしば夫婦は中東の地へ発掘旅行に出かけ、彼の地で実り多い時を過ごしている。二人で第二次大戦前に訪れたシリアでの発掘旅行の顛末を、ユーモアと愛情に溢れた筆致で描いた旅行記である本書は、また豊かな生活を送った夫妻の結婚記録でもある。
著者等紹介
クリスティー,アガサ[クリスティー,アガサ][Christie,Agatha]
1890年、保養地として有名なイギリスのデヴォン州トーキーに生まれる。1914年に24歳でイギリス航空隊のアーチボルド・クリスティーと結婚し、1920年には長篇『スタイルズ荘の怪事件』で作家デビュー。1926年には謎の失踪を遂げる。様々な憶測が飛び交うが、10日後に発見された。1928年にアーチボルドと離婚し、1930年に考古学者のマックス・マローワンに出会い、嵐のようなロマンスののち結婚した。1976年に亡くなるまで、長篇、短篇、戯曲など、その作品群は100以上にのぼる。現在も全世界の読者に愛読されており、その功績をたたえて大英帝国勲章が授与されている
深町真理子[フカマチマリコ]
1951年都立忍岡高校卒、英米文学翻訳家
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
53
ノンフィクションも書くんですね。14歳年下の考古学者の夫と共に中東に発掘旅行に行ったときの記録になります。ユーモアと愛にあふれていて、新婚旅行のような惚気かと思わされました。幸せな時間を共に過ごしているから、日々の愛おしさが豊かに感じるんですよね。旅行記でもあり、夫婦の記録でもあり、面白かったです。2023/11/17
アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
51
ミステリーの女王アガサ・クリスティーは、紀行文の名手でもあった。夫である考古学者マローワン氏の夫人としてのシリアでの発掘調査旅行記。当地の豊かな自然、動物とのエピソード、夫、同僚、価値観は違えど現地の愛すべき人々をユーモラスに描いている。イギリスからすれば、快適とは言えない現地での生活も、楽しそうに見えてくるから不思議だ。現代から見ると、すでにその頃から、うっすらとではあるけれど民族間の対立や、宗教問題の火種があったのだとわかる。もっとクリスティーの紀行文が読みたかった!2016/09/24
yumiha
47
激辛感想だった『フランクフルト…』から一変。ノンフィクションorエッセイ風の本書は面白かった。14歳年下の夫とともにシリアでの発掘の日々をつづったもの。何度か笑わせてもらった。なんせ出発前の買い物の場面から、「牙をむくファスナー」「好き勝手に振る舞う万年筆」など、楽しんで書いておられる姿が伺われる。また、同行したメンバーたちのエピソードも笑わせてもらった。特にアラブ人たちの「インシャッラー(神の思し召しのままに)」体質は、英国人だけでなく日本人の私にとっても全く違う価値観なので、驚きながら笑った。2023/07/15
ぱなま(さなぎ)
22
クリスティが考古学者の夫の発掘調査に同行した際の経験について書いたエッセイ。出発準備からして、購入した旅行鞄の中身を詰め込みすぎてファスナーが閉まらないエピソードに微笑む。現地で雇った使用人や調査仲間たちの生き生きとした人物描写もユーモアたっぷりで楽しい。 でもこれが、大戦前の発掘旅行を戦時中に回顧した記述なのだという事実は一抹の寂しさを感じさせる。すっかり様変わりし、以前のように旅することももしかしたら叶わなくなってしまった旅先。文章の上で振り返ることがもしかすると一種の慰めにはなったかもしれない。2021/02/28
花乃雪音
18
ほんのちょっと会話に変化をつけたいがために尋ねられるシリアでの滞在に関する筆者の答えもしくはこれを読んでと言ってわずらわしさから解放されるための1冊。クリスティー好きで『ナイルに死す』や『メソポタミヤの殺人』など中東ものが好きな人にはお勧めできる。2020/10/06