ハヤカワepi文庫
浮世の画家

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  • サイズ 文庫判/ページ数 319p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784151200397
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

内容説明

戦時中、日本精神を鼓舞する作風で名をなした画家の小野。多くの弟子に囲まれ、大いに尊敬を集める地位にあったが、終戦を迎えたとたん周囲の目は冷たくなった。弟子や義理の息子からはそしりを受け、末娘の縁談は進まない。小野は引退し、屋敷に篭りがちに。自分の画業のせいなのか…。老画家は過去を回想しながら、みずからが貫いてきた信念と新しい価値観のはざまに揺れる―ウィットブレッド賞に輝く著者の出世作。

著者等紹介

イシグロ,カズオ[イシグロ,カズオ]
1954年11月8日長崎生まれ。1960年、5歳のとき、家族と共に渡英。以降、日本とイギリスのふたつの文化を背景にして育つ。ケント大学で英文学を、イースト・アングリア大学大学院で創作を学ぶ。1982年の長篇デビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞を、1986年に発表した本書でウィットブレッド賞を受賞。1989年には長篇第3作の『日の名残り』でブッカー賞を受賞した

飛田茂雄[トビタシゲオ]
1927年東京生、早稲田大学大学院博士課程修了、2002年没、英米文学翻訳家、中央大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

161
タイトルの「浮世の画家」には、違和感がぬぐえない。 もっとも、原題が"AN ARTIST OF FLOATING WORLD"なので、このまま直訳すれば浮世絵師なのだろうか。それなら、まだ「浮世の画家」の方がとも思うが。 主題も掴みづらいが、芸術家における日常がテーマなのだろう。 モーツアルトにも太宰にも、日常生活者としての側面はあったのだ。2012/01/06

のっち♬

135
引退した画家が次女の結婚破談を契機に自らの過去に思いを馳せる。戦後日本と80年代初頭英国の精神的風土の重なりに着眼し、プルーストにインスパイアされた著者は"幾層もの自己欺瞞や否認により覆い隠されている"という記憶の不確実性を抽象画を描くようなタッチで抽出する。主題追求の前では関係摩擦や自己呵責の核心ははぐらかされ、旧師に帰す責任消化や精神主義への満足だけが漠然と残る。この所作を造形的厚みに変換する手腕が早熟。時代の独善的熱狂に翻弄され、自己も未来も見失い正当化に腐心する人間の脆さへの批判と同情が混在する。2023/11/26

HIRO1970

135
⭐️⭐️⭐️カズオ・イシグロさんは3冊目。なんとも奇妙な違和感を終始感じる作品でした。想像の世界を広げて構成された幼い時に離れた前の母国の戦前から戦後へのアプローチは画家の主人公を通じてなされています。全体に摑みどころがなく、登場人物たちにも余り精彩を感じず正直なところ何を言いたいのか良く分かりませんでした。先日読んだ日の名残りと似た様なテーマなのでしょうか?イシグロさんの作品はプロ意識は高いがかなり偏屈な人物の登場が多い傾向があるような感じがします。隠居して浮世離れした物分かりの悪い年寄りのお話でした。2016/06/18

mocha

120
不思議な味わいの本だった。舞台は戦後まもない日本。かつて高名な画家だった老人が、娘の縁談を機に過去を振り返る。語り手の導くままに読んでいても、ちっとも核心に近づけない。それでも小津安二郎の映画を思わせるような心地よさに淡々と読み進み、いつの間にかこの老人の人格がしっかりと形作られていることに気づく。元は英語で書かれたものなのに、昭和初期の文学を読んでいるような錯覚に陥るほど、訳がうまい。魅力は小野正嗣氏のあとがきに言い尽くされている。2016/04/06

エドワード

116
ある世界大戦で敗北した国では、戦後に生じた価値感の転倒により、古き伝統と新しい思想の間で人々の暮らしは動揺していた。婚約、就職、師弟関係、人の心は万国共通。「日の名残り」の作者が描く日本人の姿は、オースティンの描く人間模様に似ている。プライドが高い理屈屋の小野画伯をアンソニー・ホプキンスが演じてもおかしくない不思議な日本。<浮世>を表す「世の中でいちばんいいものは夜に集まってきて、夜明けとともに消えていく。」という言葉が巧みだ。ジャポニズムという日本趣味が<浮世絵>を愛したのも余りに新鮮だったからだろう。2015/05/29

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