内容説明
リズボン家の姉妹が自殺した。何に取り憑かれてか、ヘビトンボの季節に次々と命を散らしていったのだった。美しく、個性的で、秘密めいた彼女たちに、あの頃、ぼくらはみな心を奪われ、姉妹のことなら何でも知ろうとした。だがある事件で厳格な両親の怒りを買った姉妹は、自由を奪われてしまった。ぼくらは姉妹を救い出そうとしたが、その想いが彼女たちに伝わることは永遠になかった…甘美で残酷な、異色の青春小説。
著者等紹介
ユージェニデス,ジェフリー[ユージェニデス,ジェフリー][Eugenides,Jeffrey]
1960年、アメリカ、ミシガン州グロスポイントに生まれる。ブラウン大学、スタンフォード大学で創作を学ぶ。タクシー運転手、ヨット雑誌ライターなど、さまざまな職業を経験したのち、1980年代には一時、映画脚本家をめざす。その間も『ニューヨーカー』などの一流文芸誌で活躍し、やがて創作に専念することとなる。1993年に出版された処女長篇が、ジェイ・マキナニーらに絶賛され、アガ・カーン賞をはじめ数々の賞も受賞した
佐々田雅子[ササダマサコ]
立教大学文学部英米文学科卒。英米文学翻訳家
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
168
ハイスクール時代を巡る ぼくらの 過去への旅である。 自殺したリズボン家の美人五姉妹との 思い出 …舞台は 1970年代のアメリカらしいが、 かつての 古き良きアメリカの面影が 残る中、姉妹は 自殺する。 この作品のテーマは何なのだろうか? 謎めいた五姉妹は 次々と自殺していく …不確かな青春時代を リリカルに描いた、 そんな作品だった。 2019/05/08
sin
92
一言で云うと出歯亀の手記!それとも「信仰心篤い母親の支配と見て見ぬふりの父親の逃避に、果たして家族とは子供にとって逃れ得ぬ枷なのだろうか?」との問い掛けか?しかし作者自らが紡ぎ出した文章に陶酔したかの様に繰り出される数々の飾り過ぎとも思える描写…現実的とは思えない屋根上の行為、不可解な匂いの描写による荒廃、極めつけに自死を美化したかのような記述の有り様は読むに耐えない◆英ガーディアン紙が選ぶ「死ぬまでに読むべき」必読小説1000冊を読破しよう!http://bookmeter.com/c/3348782018/03/16
NAO
64
暑くなる少し前に群れ飛ぶヘビトンボ、一匹一匹の命は短くはかない。でも、それが大量に湧くと、空の色をも変えてしまう。末娘セシリアの思春期の悩みと自殺(「先生は十三歳の女の子になったことはないでしょう」)は、何かの預言のように一家に取りつき、一家を衰退させ滅亡へと導く。残りの少女たちは、もはや誰も、そこから逃れることができない。これは、一家の衰退の話。だが、その舞台がミシガン州で、その州都デトロイトを思い浮かべたとき、この一家の衰退の姿は、アメリカの、アメリカ自動車産業の衰退の姿ともだぶって見えてくる。 2016/11/23
Mishima
43
そもそも「死」という共有概念を疑ってみるべきかもしれない。なぜならその後のことを知らずに作ったものだから。そちら側の世界に移っただけかもしれない。終わりだなんて確証はない。その後の世界はいろいろ想像される。ある日ふいにそいつはノックをしてくるのかもしれない。現存の世界の重みが無さすぎたとしたら。ライトのスイッチオフと同じだとしたら。こちら側には無残な亡骸が見え傷ましいと人は片づける。哀しいのはこちらの世界に引き留めるほどの、よすがを見つけられなかったことだ。それだけだ。【ガーディアン紙必読書1000】2021/06/21
hit4papa
41
リズボン家の5人の姉妹が自ら命をたつ1年間の物語です。20年後に、彼女らの友人のひとりが過去を振り返っていく筋立てになっています。少女たちの死を扱っていながらも不思議と深刻さが希薄で、絵画的かつ寓話的な作品です。