内容説明
遭難した男たちが生き延びるため少年を殺して食べたとき、その行為は道徳的に許されるのか?ハーバード大学の人気教授マイケル・サンデルは、鋭い問いかけで現代社会の中にひそむ「正義」の問題を取り出し、刺激的な議論を繰り広げる。その彼の話題の講義が待望の文庫化!NHK教育テレビで放送された「ハーバード白熱教室」の第1回~6回、および東京大学特別授業の前篇「イチローの年俸は高すぎる?」を収録する。
目次
第1回 殺人に正義はあるか
第2回 命に値段をつけられるのか
第3回 「富」は誰のもの?
第4回 この土地は誰のもの?
第5回 お金で買えるもの 買えないもの
第6回 なぜ人を使ってはならないのか
東京大学特別授業(前篇)―イチローの年俸は高すぎる?
著者等紹介
サンデル,マイケル[サンデル,マイケル][Sandel,Michael J.]
1953年生まれ。ハーバード大学教授。専門は政治哲学。ブランダイス大学を卒業後、オックスフォード大学にて博士号取得。2002年から2005年にかけて大統領生命倫理評議会委員。1980年代のリベラル=コミュニタリアン論争で脚光を浴びて以来、コミュニタリアニズムの代表的論者として知られる。類まれなる講義の名手としても著名で、中でもハーバード大学の学部科目“Justice(正義)”は、延べ14,000人を超す履修者数を記録(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はっせー
120
本当に勉強になった! マイケル・サンデルさんの講義がそのまま本になった感じである。正義とは何かをという問いに答えた3人の哲学者について実例などを用いて彼らの考え方について議論する。今回の上巻では主にベンサムの功利主義について語っていた。最後に少しカントについて触れていた。特に印象的な例えはやはり船の漂流の話である。船の漂流中に1人の若者を殺すことは道徳的に許されるか否かについては考えさせられるものであった。カントの考えは難しいのでゆっくり理解したい。早く下巻をよみたいと思った!2020/02/17
ころこ
48
当時はブームになったことすら知らず、遅ればせながら読む。講義だが、ご高説拝聴ではなく、会話形式による学生との応答に妙味がある。何が正しいかを決めつけることなく議論を進め、次の講義では前回の議論の答えめいたことが前提となることで、学生は価値を押し付けられる窮屈さから解放されている。ベンサム、ミル、ノージック、ロック、カントが、功利主義→帰結主義→リバタリアニズム→リベラリズムの議論の流れの中で説明される。教科書的な記述を見慣れている読者からすると、それぞれの説が批判と擁護の両方に曝されることで、見慣れた知識2023/11/30
ちゅんさん
33
すごく読みやすくて面白い。後半カントのところが少し難しかったが構わず読み続ける。下巻へ2024/01/06
樋口佳之
31
懐かしいなあ。カント先生偉大。指針として受け入れていれば大きな誤りに陥ることがなさそう。/何度も出てくるビルゲイツへの課税の話、自分はもっともっと課税して当然だと思う。彼(というかマイクロソフト)が行った事って、結局隠して集めての独り占め。で今になって袋小路でWSLとか。毀誉褒貶多いけど、この世界への貢献という観点なら、リーナス・トーバルズやストールマンが同様の報酬を得ていてもおかしくないはず。2020/06/19
カザリ
31
一瞬ユートピア、最善に見える社会システムや制度が実はディストピア的な部分があるのでは、こんな疑問を持って読みました。サンデル教授は正しさはものごとを分配する方法と評価の方法の二つにまたがるものだと言っていますが、とくに1番はじめに問題視されているベンサムの功利主義全体のために少数派を犠牲にする最大多数の最大幸福という概念概念。個人的には数百年も前の原理が共産主義として、数十年前まで実行されていて、エンタメの映画や小説でもいまだに使われていてまじでなんとかしなきゃと思いました笑2019/04/23