内容説明
中絶手術で患者を死に追いやった容疑で産科医が逮捕された。彼が違法な中絶を手がけていたのは事実だが、この件に限っては身に覚えがないという。無実を信じる同僚の医師ベリーはひとり真相を探り始めた。しかし、関係者は固く口を閉ざし協力しようとしない。いったい彼らは何を恐れているのか?執拗な調査を続けるベリーに、やがて黒い圧力が。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞を受賞した迫真の医学サスペンス。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
156
面白かった。クライトンのデビュー作。この時代中絶は違法だった。悪いと判ってはいても、医者がなかなか手を切れない世界。ハードボイルドまがいの探偵をするのが医者であるのも面白い。恐るべしクライトン。こんな時代から小説を書いていたのか。筋の通った正義感。事を荒立てるのでもなく、蓋をするのでもなく。ヒーローになろうとしない主人公に痺れる。エドガー賞は知識のひけらかしだけでは取れないのだろう。筋の通った人物描写も必要だ。人物それぞれに立ち位置と背景があり、きれいごとだけではすまない医療の世界の複雑さが読める。2023/05/29
佐島楓
21
中絶手術で患者を死亡させたとして、「私」の同僚が逮捕された。彼は無実、そう信じて、調査を始めるのだが・・・。これがデビュー作だとは。アメリカにおける妊娠中絶の問題をミステリの形で見事に切り取って見せている。その手法は実に鮮やか。「ER」のシリーズが好きだったので医学知識の高さは知っていたが、本作で納得した次第。ほかの本も読んでみよう。2013/09/06
ねりわさび
20
緻密な医療描写とサスペンスを組み合わせて主人公の医師を軸に物語は加速していく。あまり時代的な古臭さは感じない出来で、クライトンの代表作であるテレビドラマERの数話分を、そのまま一話の小説にまとめたような秀作でした。2019/01/17
春ドーナツ
14
「ジュラシック・パーク」とその続篇を読んでいるときに、マイクル・クライトンはNHKで放映されていた海外ドラマ「ER」の生みの親だったことを思い出した。第3シーズンのVHSビデオセットを購入したものの、一度も観ることなく、時代はDVDに切り替わった。とにかく場所をとるので、断腸の思いで処分した。そんなノスタルジーに浸りながら、なんか医療もの読みたいと案じて探し出したのが本書だった。1960年代後半の医学界が舞台である。医療用語の羅列がグリーン先生の声となって脳内再生された。「ER」感がよく出ているのが嬉しい2023/09/03
Yoko
14
映像作品ではお世話になっているクライトン御大ですが、小説ははじめてなんです、実は。この作品の驚くところは当時まだ学生だった彼が困窮を打開するために書いたのだということ。しかもエドガー賞受賞。天才ってこれだから…ね。お得意の医学ネタ+病理医が探偵もどきとなって活躍するハードボイルド的な内容で最後まで面白い。ただ○○医が多数登場して少々混乱します。しかも私、事件解決後のエピローグ的なラストがピンとこなかったので、どなたかもし読んだら教えてくだされ。2016/03/23