出版社内容情報
人間に奉仕する人工妖精・揚羽が、彼女の通う看護学校で多発する怪事件に挑む連作中篇
内容説明
男女別の自治区で性別の違う人間と共に暮らす人工妖精たち。その一体である揚羽は、全寮制の看護学園で同室の連理や義妹の雪柳らと学園生活を謳歌していた。人間に害をなす人工妖精を密かに殺処分する“青色機関”の一員という裏の顔を持つ揚羽は、学園内の連続事件に死んだはずの科学者・不言志津江の陰謀を見出す。それは揚羽の人生に今後降りかかる過酷な運命の予兆でもあった。人気シリーズの前日譚たる連作中篇集。
著者等紹介
籘真千歳[トウマチトセ]
1976年沖縄県生まれ。心理学科卒。2008年に『θ 11番ホームの妖精』で出版デビュー。『スワロウテイル人工少女販売処』は第10回Sense of Gender賞話題賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
33
アシモフの第三原則に製作者の意図を知られないようにプログラミングされた人工妖精。人間に姿は似ていても階級とプログラミングによって彼等、彼女らは人工妖精と区別される。ならばプログラミングを保ったまま、初潮や性欲、世界への構築などができたとしたならば彼等、彼女らは何になる?不言志津江の描写は、碇ユイの形代として量産されるが、初期の自我や意志を持つ(全ての)綾波ユイかと思ってしまうのです・・・。あるいは増殖し、拡散して呪いのように永劫、影響し続けるウィルスや文化という一種の「意志」の力のようなものか。2013/12/23
シュエパイ
21
生まれたての彼女達が賑やかに過ごした学園と、やがて喪われる物語。執刀し続ける彼女の言葉が、未来を思うと哀しくなってしまいます。それでも、明るい台風のような義妹と、強くやさしい友人との日々が愛しくてたまりません。・・・ドツボッシュトルタってなんだ(笑)公式FC騒動の無軌道な暴走ぶりが素敵すぎてwそして最後の友人とのシーンに、頼もしさを感じて。あぁ願わくば、時よとまれ、汝は美しい。そんな気持ちのまま、何度も読み返していました。2012/09/19
yohiiiidayo
19
久々に読了。スワロウテイル シリーズ3作目にして序章。他の巻と違い、学生時代の揚羽は周りの友人となかなか騒がしくも楽しげな日常も見られる。彼女のその後を考えるとかえって辛くもあり。学園+SFの組み合わせは、今思うとなかなか新鮮。2017/05/10
ソラ
19
面白かった。前作2つよりも読みやすかったので、話を理解しやすかったのが一番の要因かもしれない。設定やキャラはとても好きなシリーズだけど文章がたまに過剰で読みにくい面もあったので、このように中編になると過剰さが消えて読みやすかった。2012/09/14
河瀬瑞穂@トマト教司祭枢機卿@MMM団団長
17
個人的注目のシリーズ第3巻。ちょっと分厚いですが短編連作集ですのでぽつぽつ読めます。物語は前2作から時間を遡り、揚羽が学生だった頃のエピソード。「秒速5センチメートル」だの、相変わらず小ネタをちりばめて楽しく読めますが、実は「自我」「自己認識」など、自己存在に関する哲学的要素が根底にある結構ハードなSFシリーズ。揚羽の純粋さに救われます。そして雪柳かわいいよ雪柳(笑)2012/09/21