内容説明
あたし=新井素子の小説のキャラクターたちが現実世界に実体化して以来、驚愕の事態の連続。自宅全焼に誘拐騒ぎ、宇宙人に命を狙われたり。その上、人間に虐げられた動物に同情したキャラクターたちが動物革命を起こす。猫やライオン、カラスにゴキブリの大行進。この混乱の原因は素子にあるというけれど…いたいけな少女が偶然引き起こした絶句すべき大事件の行方は!?番外篇「すみっこのひとりごと」と新あとがきを収録。
著者等紹介
新井素子[アライモトコ]
1960年東京・練馬生まれ。立教大学ドイツ文学科卒業。77年、高校在学中に「あたしの中の…」が第一回奇想天外SF新人賞に入選。話し言葉を活かした斬新な文体とストーリーが選考委員の星新一に激賞された。SFファンの圧倒的な支持を受けて、81年『グリーン・レクイエム』、82年「ネプチューン」で2年連続星雲賞受賞。99年には『チグリスとユーフラテス』で日本SF大賞に輝く。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たか
33
上下巻。異星人の起こした次元事故によって、新井素子の物語世界が現実空間に流出し、彼女の小説のキャラクターが実体化してしまうというSFメタフィクション。 登場人物がやたら多くて、現実と虚構が入り混じる、はちゃめちゃなストーリーになっている。D評価2018/02/20
はなん
21
どんどん勢いが増して、この先どーなるんだ!?と思っていたら唐突に終わる。のに、そこに違和感も不信感も抱かず納得させられてしまう。何度読んでも実は、そこが私にとって一番…絶句する作品かもしれない。面白くて満足しつつ、いつも、ね。ラストに何かを期待してるんです。いや、決まっている分かっていることなのに。そして毎回、「グリフォ」の面々の物語が読みたいなぁ、と願います。ダメかな?素子せんせ? 強い物語。今回は本当に励まされました。この、タイミングで手にしていたのがまた、ご縁、なのです。2014/02/24
LUNE MER
16
割と本は読む方だと思っているが、本厄超えるまでこんな面白い小説と出会うこともなくきて、それがちょっとしたきっかけで読むことになるなんて分からないものである。下巻に入って完全にカオス状態なんだけど不思議と心地好い。もしこれを中学生の頃とかに読んでたら読書の嗜好に影響を与えてた気がするのだけど、なんとなく今初めて読むというこのタイミングが最適だったようにも思う。後半のメタな感じのあたりとか分かった風な顔して教師とか斜め上から見下ろすタイプだった気がするので…(ー ー;)。あとがきが本編よりカオスでウケた。2021/12/01
ぎん
16
上巻は勢いはいいけど気恥ずかしさを感じる文章が気になったけど、後半になって展開がシリアスになると、若さや青臭さが多少気になるものの面白く読めた。誰にでも勧められる訳ではないが、SF好きならば大体楽しめるはず。で、作者あとがきを読んで、楽しんで書いたとのことで納得。確かに楽しそうでパワーがあるよね。そういうのは読んでいる方も楽しくなる訳で、ハマれば面白いと思うよ。2017/05/28
みのくま
11
世界は矛盾に満ちている。何も悪い事をしていないのに宇宙人に命を狙われる。しかしそんな仕打ちにあう「もとちゃん」も、自分の足に止まった蚊を冷酷に叩き殺している。生物はそんな自然の摂理をおそれ、そして絶句する。はるかに絶大なものに対して我々は言葉を持たない。しかしその中で人間だけは、その良し悪しをともかくとして、自然に対しものを言った。ぼくたちは理不尽に被害者になり、また加害者になる。考えれば考える程、ぼくたちはニヒリズムに堕ちていく。でもそれは間違いだ。ぼくたちはこの世界を、自己を肯定しなければならない。2017/12/03