内容説明
キャラグッズの買い物につきあってくれる裕美子は、俺にとって最高の彼女。でも、今日のデートはどうにも気分が乗らない。久々に再会した旧友の科学者、溝呂木がこの世界の破壊を企んでいるらしいのだ―アキバ系恋愛に危機が迫る表題作、SFマガジン読者賞受賞の言語SF「メデューサの呪文」、孤独なサイボーグの見えざる激闘を描く「奥歯のスイッチを入れろ」など7篇を収録。
著者等紹介
山本弘[ヤマモトヒロシ]
1956年京都生まれ。洛陽工業高校電子科卒。78年「スタンピード!」で第1回奇想天外SF新人賞佳作に入選。87年、ゲーム創作集団「グループSNE」に参加し、作家・ゲームデザイナーとしてデビュー。06年『アイの物語』で日本SF大賞候補となり、注目を集める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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『よ♪』
69
トンデモ話もここまで真剣ならば天晴だっ!ヽ(*≧▽≦)ノシ彡☆バンバンっ…と思ったら、あとがきに「SFとは筋の通ったバカ話である」とありました♪ケムール人もシュレディンガーよりフォン・ノイマンを信じよ!(シュレディンガーのチョコパフェ)。某石〇森章〇郎先生の加〇装置か、バイ〇ニック〇ェミーか(奥歯のスイッチを入れろ)。某スペースオペラを彷彿する異星人との共存世界、パダワンよ(  ̄▽ ̄)_/”ブゥンッ(バイオシップ・ハンター)。虐殺器官のような言語兵器(メデューサの呪文)等々。バカで真剣。愉快なヲタ話七篇♪2019/06/05
dr2006
50
作者はSFは筋が通ったバカ話であると云うが、その「筋」とは、最新の科学であり本書においては物理学がメインである。なので、短編集である点とタイトルの甘さに反しSF度は極めて深く、凡そ普段使わない脳の領域を酷使することになった(笑)生身の人間の400倍の早さで動けるソニックスピードソルジャーの戦いを描く「奥歯のスイッチを入れろ」は、読んでいると登場人物の動きが全てスローモーションで脳内再生するという秀逸映像作品。タイトル作品の他、意識と心の所在をゾンビに例え解き明かす「七パーセントのテンムー」が面白かった。2023/02/17
ntahima
38
数年前『神は沈黙せず』をタイトル買いしたのが著者との出会いだった。『MM9』『地球移動作戦』も読んだ。プレ・オタク世代の私には腰の引ける人物設定もあるが好きな作家の一人である。(作者紹介見たら年上でした!)全7編中『サイボーグ009』『エイトマン』へのオマージュとも言える「奥歯のスイッチを入れろ」がなかなか面白かった。30秒限定だが音速で動ける者同士が戦ったらどうなるかを克明に描いている。主旨は違うが、死が一瞬でないことを残酷なまでに描いたアンブローズ・ビアスの『アウル・クリーク橋の一事件』を思い出した。2013/10/23
ヨーイチ
34
SFです。七編の短編集。テーマも肌合いも色々、でも皆んな骨格がシッカリしていて面白い。SFと云えば手塚治虫から入り星、筒井、小松、レンズマンシリーズ、キャプテンフューチャーシリーズ、そして巨匠アシモフのロボット物。あと忘れてはいけないダーティペアシリーズ。結構読んでいるが今や皆、古典となってしまった。(ダーティペアは違うかも)作者が駆使する科学理論は前出の作者達の持っていた「科学の世界」とは大きく異なっていて、難解だが新しい科学理論を勉強した気にさせてくれる。続く2016/12/22
活字スキー
32
ハヤカワJコレ版『まだ見ぬ冬の悲しみも』に『七パーセントのテンムー』を追加して改題文庫化したもの。『まだ見ぬ~』は既読なのだが、脳梗塞で倒れられた山本先生を応援したくて。「山本弘はいつでも山本弘」という前島賢さんの解説が的確すぎて笑った。文化的にも産業的にもそれなりのポジションを築いた今時のオタクとは違い、「オタク」という呼称すら無かった時代からオタクの矜持で生き抜いてきた筋金入りのSFオタクによる、古典SFのエッセンスを若い世代に伝えようとするSF愛に溢れた7篇。 2018/10/20