内容説明
第三次世界大戦の傷もようやく癒えた2040年、アルファ・ケンタウリから通信が届いた。大戦直前に出発した移民船〈クヮン・イン〉が植民に適した惑星を発見、豊富な資源を利用して理想郷建設に着手したというのだ。この朗報をうけ〈メイフラワー二世〉が建造され、惑星ケイロンめざして旅立った。だが彼らを待っていたのは、地球とはあまりにも異質な社会だった…現代ハードSFの旗手がはなつ壮大なスペース・ドラマ。
著者等紹介
ホーガン,ジェイムズ・P.[ホーガン,ジェイムズP.][Hogan,James P.]
1941年、ロンドンの生まれ。16歳で学校をやめ、新聞社のメツセンジャー・ボーイや食料品店の配達係などの職を転々としたのち、奨学生選抜試験に受かり王立航空研究所に入学、電気・電子・機械工学の実際と理論の両面を学ぶ。いくつかの会社で設計エンジニアとして従事したのち、1970年代にデジタル・エクィップメント社に入社。1977年、同社の仕事でアメリカに移住。同年処女長篇『星を継ぐもの』をバランタイン社より出版、一躍SF界の注目を集める。その後も該博な科学知識に裏付けされたハードSFを次々に発表。現在はアイルランドのダブリン近郊、ブレイという町で執筆活動を続けている
小隅黎[コズミレイ]
大正15年生、昭和25年東京工業大学機械科卒、SF研究家・作家・翻訳家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アルビレオ@海峡の街
15
世界大戦直前に、新たな居住惑星を発見するため、人類の種を搭載した宇宙船が地球を出発した。やがて到達した惑星をケイロンと名付け、ロボットにより育てられたケイロン人たちはそこで新たな社会秩序と高度な科学技術を確立する。後から地球を発った移民たちは、二十年をかけ惑星ケイロンにたどり着くが・・・。全体として政治、軍事色が強く、また登場人物がやたらと多く混乱した。ホーガン先生は序盤を凌げば加速度的に面白くなるというイメージだったが、本作は個人的に冗長であった。もう少しエンタメ色がほしかったかな。好みが分かれる作品。2019/02/07
友和
15
30年前に出版された小説。〈メイフラワー二世〉号の乗組員がアメリカ人として見て読んでみると、すごくリアルに見えた。2014/11/09
tama
12
自本 持ってるのを忘れていたが、発掘で再会。J・P・ホーガンって好きだったんだよね。長いお話ですがハラハラドキドキやら周到に準備してある。でも、基本的な姿勢が相当しっかりとしているので浮ついた話にならない。真面目な話、アメリカに蔓延しているキリスト教原理主義者はこの本を焚書対象にするかも。ケイロン人は地球人のDNAなのだが完全に知性の人達。他人の考えをしっかり検討して正面に投げ返す。今の私らに最も苦手な相手かもね。2015/07/01
C28M73Y18K14
9
クライマックスの戦闘や細かすぎる素粒子論の話などは冗長に感じたけど、それを補っても余るくらいのケイロン人社会の斬新さ。資源のアクセスがフリーで、かつ人類の歴史が背負う固定観念や因習の無い状態からスタートした文明はこのようになるだろうという考察。既得権益を守ろうとする地球人と、論理的で合理的なケイロン人との会話はかなりきつい皮肉だが、胸がスカッとする。解説ではケイロン人の特性と並べて、ゲーム理論の話。囚人のジレンマを再現したゲームで生き残るプログラムは協調型。利己的なプログラムは淘汰される。2013/08/21
ゆき
7
★★★★☆:移住先の惑星ケイロンで人工的に生まれロボット達によって育てられたケイロン人。偏見や差別もなく、豊富な資源と単純労働をこなしてくれるロボット達の存在により理想的な社会を形成するが、あとから惑星にやってきた旧態依然の地球人たちはその社会に馴染めず当惑する。SFという形にはなっているが、今の社会の差別や偏見、既得権益を守るための謀略と暴力といったものを浮き彫りにしていて、こんな社会に生きていることが哀しくなってしまった。後半は手に汗握る展開もあり、エンタテイメントとしても秀逸だった。2016/03/30