Ｈａｙａｋａｗａ ｐｏｃｋｅｔ ｍｙｓｔｅｒｙ ｂｏｏｋｓ 煙突掃除の少年

ヴァイン，バーバラ【著】〈Ｖｉｎｅ，Ｂａｒｂａｒａ〉/富永 和子【訳】

早川書房（2002/02発売）

• サイズ B40判／ページ数 438p／高さ 19cm
• 商品コード 9784150017125
• NDC分類 933
• Cコード C0297

内容説明

小説家ジェラルド・キャンドレスは７月６日に７１歳で永眠した。１９２６年５月１０日生まれ―父の回想録の執筆をもちかけられたキャンドレスの娘サラは、自分が父の過去をほとんど知らないことに気づいた。さっそく調査に着手した彼女は出生証明書を頼りに父の親類らしき老女を突き止めるが…「ジェラルドはあたしの弟よ。五歳のとき髄膜炎で死んだわ」古びた死亡証明書を前に、愕然とするサラ。父は、ジェラルド・キャンドレスではなかったのだ。では、いったいどこの誰だったのか。不安を押し殺して調査を進める彼女が突き止める衝撃の事実とは。

著者等紹介

ヴァイン，バーバラ［ヴァイン，バーバラ］［Ｖｉｎｅ，Ｂａｒｂａｒａ］
ルース・レンデルの別名義。１９８６年の『死との抱擁』ではじめて使用され、同書はＭＷＡ賞最優秀長篇賞を受賞した。ヴァイン名義では、その後も二度ＣＷＡ賞ゴールド・ダガー賞を獲得している

富永和子［トミナガカズコ］
独協大学外国語学部英語科学卒。英米文学翻訳家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[キムチ２７]

彼女の人となりを深くは知らないけど作品性に憧憬を抱く。ヴァイン名の作品がつとに…レンデル名のそれより。家族の紐帯を心理的に掘り下げていく手法は時として残酷なまでにも。キャンドレス…夫として、父として…読み手からすれば作家としての彼にどんどん新しい秘密が掘り起こされていく展開は読み止まらぬほど。妻アーシュラと娘（特にサラ）、それぞれの視点からみはるかすのもサスペンスだけど、キャンドレスの抱いた愛情の温度差の謎解き視点の面白い。題名～煙突掃除の由来が姿を現す頃に見える霧の向こうに唸らされた♪

2016/04/10

[星落秋風五丈原]

小説家ジェラルド・キャンドレスは7月6日に71歳で永眠した。父の回想録の執筆をもちかけられたキャンドレスの娘サラは、自分が父の過去をほとんど知らないことに気づいた。さっそく調査に着手した彼女は出生証明書を頼りに父の親類らしき老女を突き止めるが「ジェラルドはあたしの弟よ。五歳のとき髄膜炎で死んだわ」古びた死亡証明書を前に、愕然とするサラ。父は、ジェラルド・キャンドレスではなかった。夫や父が思っていたのとは別の人物だったとわかれば、残された家族はもっと騒然となっていいはずだが、なぜか最も濃いはずの妻が淡泊。

2021/02/16

[アルパカ]

ジェラルド・キャンドレスという作家がある日心臓病で亡くなる。彼には妻と娘二人がいる。妻アーシュラの視点から描かれる文章では娘には愛情深く接するが妻には冷淡でアーシュラは結婚を後悔しているとあり、驚いた。今まで読んだことのない家庭状況。長女のサラは父の自伝を書こうと出生証明書から父の親類らしき老女性を尋ねるが「ジェラルド・キャンドレスは私の弟で5歳の時死んだ」と言われ、父は本当は何者なのか、と調べ始める。アーシュラが気の毒。でもサムという素敵な人と出会えて良かったかな。心理描写が丁寧。

2020/07/25

[かんやん]

他の作品は知りませんが、心理描写や恋愛シーンなど、いかにも女性向けという感じのミステリー。レビュアーも、おおむね女性ですね。ファンサイト(おそらく女性による)がいくつかあり、熱狂的なファンも少なからずいるようです。確かに、冒頭の2ページの仄めかしで、謎の半分は解けてしまうし、目を惹く推理や展開もないのにかかわらず、徹夜させるような吸引力がありました。謎を追う現在と回想の交錯が絶妙で、語り口が古風というか優雅というか。他の作品も読んでみたいです。しかし、構想自体に根本的に無理があるというか、強引というか。

2016/05/10

[椿子]

ほんっと良かった。緻密で繊細で完璧に伏線を最後に向かって回収していく様には感動すら覚える。　一人の人間の過去と人生を知っていくにつれて、自分の人生も見直していっているような、不思議な余韻に包まれる作品。　アーシュラがとても好きです。

2011/03/03