内容説明
式神を操り、物の気と戦う呪術師・魔術師としての陰陽師…。中国古代の陰陽五行説にもとづいて日時や方角の吉凶を占い、祓いや祭祀を行なう俗信としての陰陽道…。こうした通説に疑問を投げかけ、陰陽道を、仏教・神道と並ぶ日本の三大宗教の一つとして歴史的に捉え直す。その祭祀・呪術の実態を史料にもとづいて描き直し、律令官人としての陰陽師の日常を明らかにする。安倍晴明という、なかば伝承化した人物の実像を曝き、陰陽道とは何かをあらためて問い掛ける。
目次
序章 陰陽道とは何か
第1章 陰陽道の源流
第2章 陰陽道の成立
第3章 平安貴族と陰陽師
第4章 陰陽道の呪術と祭祀
第5章 賀茂保憲と安倍晴明
第6章 晴明伝承の成立
終章 陰陽道批判の系譜
著者等紹介
山下克明[ヤマシタカツアキ]
1952年、千葉県生まれ。青山学院大学文学部史学科卒業、同大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。博士(歴史学)。現在、大東文化大学東洋研究所兼任研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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犬養三千代
5
陰陽道の萌芽から当時の日記などの一次資料を駆使しての労作。「六壬式占」の盤を見てみたい。平安貴族の日常生活が陰陽師の占いに既定されていたことがよくわかる。「物忌」なども五行説がベース。晴明の伝説化の流れも詳細にえがかれる。来世を考えず現世の願望を満たすのが陰陽師たな。吉田兼好の批判の徒然草も読みたい。2020/07/16
takao
3
ふむ2023/12/01
葉つき みかん
2
面白かった!古記録を読むときに分からない事があれば、何度も参照したい。平安貴族が、どのような考え方に基づいて禁忌を守っていたのかが、理論的に理解できた。陰陽道が、災厄を避けたり、幸福を得るための現世利益の術で、怨霊の調伏は、僧に任されていたと言う記述は新鮮だった。2013/08/15
たたる
2
陰陽道の成立(中国からの輸入ではあったが、独自の進化を遂げた課程など)、公卿や天皇が陰陽師による祭祀をいかに重視するようになっていったかなどの変遷を丁寧に跡づけている。安倍晴明についていも、実在の清明がどのように伝説的な陰陽師に祭り上げられたのか、という考察もしてあり興味深かった。2010/10/25
sfこと古谷俊一
2
平安末までの文献資料を精査して、陰陽道信仰が成立するに至るプロセスを検討。これまでの陰陽道関連の本で、安易に「こう書いてあったからこうである」と扱われていたような問題も、色々と他の史料と照らし合わせての検討がなされています。 安倍晴明伝承の成立プロセスや、天象や怪異を治世への批判と読まなくなる展開から陰陽道が成立していく姿など、たいへん面白いものでした。2010/07/11