内容説明
国宝壁画の劣化が発覚してから三年。石室解体が決まり、二〇〇七年四月に予定されている高松塚古墳。解体は必要なのか、壁画はなぜ劣化したのか。そして劣化は人災なのか。保存料学の最新知見や国内外の壁画保存の調査を踏まえ、関係者への個別取材、修理日誌の読み返しなどから検証する。劣化問題を追い続けてきたジャーナリストが、学者や当事者には書けない高松塚古墳壁画劣化の真相を明かす。
目次
序章 高松塚古墳壁画の発見
第1章 高松塚古墳壁画の保存対策
第2章 高松塚古墳壁画の劣化
第3章 海外の壁画保存
第4章 日本の壁画保存
第5章 カビとの闘い
第6章 “解体修理”
終章 壁画の保存と公開
著者等紹介
毛利和雄[モウリカズオ]
1948年生まれ。早稲田大学第一政治経済学卒業。NHK入局後、奈良・大阪局などを経て、現在、NHK解説委員。文化財報道に長年携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ネコタ
30
高松塚古墳の壁画の発見からその保護について経緯を書かれたもの。発掘というのは壊してしまうということを改めて強く感じた。文化財というのは保存することは難しい。保存というのは劣化が進むのを遅くすること。保存の過程で誰かが何かを公表しなかっただとか、遅かっただとか、批判することは簡単にできる。その先に進むことが大切。みんなで考えなければいけない。2020/02/15
takao
2
ふむ2023/02/01
げんさん
1
現地保存が放棄された高松塚古墳。文化庁等の保存の拙劣さに腹を立てていたが、文化財が劣化するのは宿命であるとのこと。必ずしも日本だけが劣っているわけではなさそうだ
kei
1
情報・史料学のレポートのためにななめ読み。日本での壁画、とりわけ古墳壁画の出土はほとんど類例がない(キトラ古墳くらい?)ので保存/修復といっても手探りだったわけで、諸外国の壁画修復の技術を援用しても日本と環境がかなり違うので苦労したろうな...と。発掘した瞬間から劣化のスピードがおそろしく加速するので時間に猶予ないし...と考えだすととまらない。縦割り行政の弊害含め今後の保存修復学には活かされんとまずいよなあ。2012/01/19
misui
1
副題に「保存科学」とあるようにちょっと専門性が強い。劣化に関して、表向きは文化庁の縦割りとセクショナリズムが糾弾されているけれど、保存科学と考古学、国と国民、マスコミなど、それぞれの間に文化財保存のためのコンセンサスが取れていないのが原因だろう。修復ののちに現地に戻すのは折衷的な落としどころとはいえ、これからもさらに保存意識を高めていく必要がある。2009/11/18