内容説明
1980年代、「ポストモダン」が流行語となり現代思想ブームが起きた。「現代思想」は、この国の戦後思想をどのような形で継承したのか。海外思想をどのように咀嚼して成り立ったのか。なぜ80年代の若者は「現代思想」にハマったのか。丸山眞男や吉本隆明など戦後思想との比較をふまえ、浅田彰や中沢新一らの言説からポストモダンの功罪を論じる。思想界の迷走の原因を80年代に探り、思想本来の批判精神の再生を説く。沈滞した論壇で唯一気を吐く鬼才による、異色の現代思想論。
目次
序 かつて、「現代思想」というものがあった
1 空回りしたマルクス主義(現実離れの戦後マルクス主義;大衆社会のサヨク思想)
2 生産から消費へ―「現代思想」の背景(ポストモダンの社会的条件;近代知の限界―構造主義からポスト構造主義へ)
3 八〇年代に何が起きたのか(日本版「現代思想」の誕生;「ニュー・アカデミズム」の広がり)
4 「現代思想」の左転回(なぜ「現代思想」は「終焉」したのか;カンタン化する「現代思想」)
著者等紹介
仲正昌樹[ナカマサマサキ]
1963年、広島県生まれ。東京大学総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程修了。金沢大学法学部教授。専攻は、政治思想史、比較文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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takam
24
日本の戦後思想についてのまとめとして良い本だと思う。日本はどんな思想を受け入れるという見方もあるが、それは日本の土壌で根無し草にしてしまうという指摘が丸山真男がしているが私もそれに同意する。マルクスについても十分に理解した上でなく、一種のアイコンとして使われている点で日本的だと思う。仲正さんの本を通して、戦後の日本の若者文化やサブカルがその時々流行った思想とどう結びついて、どう決別していったかというストーリーが理解できた。2020/06/30
ラウリスタ~
17
仲正の啓蒙本のうちでも特に勉強になる。戦後日本の知識人たちが、どのようにマルクス主義、構造主義、ポストモダンの思想を、あるときはつまみ食いし、またある時は誤解して、日本に移植してきたか。フーコーやデリダなどの原著を読む前に、ここ数十年の思想史的な大きな流れをこのような本で予習してから読むことが有効だろう。仲正の真骨頂は、難解な思想を、分かりやすい左右対立の流れの中に描き出すことだろう。二項対立的思考法を拒否する構造主義、ポモは、マに対しては右なのだが、ソ連崩壊後マの退潮と共に、「左転回」する。2021/02/26
かふ
16
日本の戦後からの思想をポストモダン(80年代)中心に語られて、ちょうどその頃見事に嵌っていてたので懐かしい。ポストモダンが系統的な大学教育中心ではなくサブカルチャーから受容されていくのは自分もそうだった。保守主義の考察も欲しかったような気もするがこれ以上新書一冊では無理なのかもしれない。この本はポストモダン中心によくまとまっていると思います。ポストモダンがフランスの重鎮たちの死と共に衰退していったというのはそうなのかもしれない。2018/12/16
たばかる
15
以前読んだ佐々木敦の「ニッポンの思想」とセットでグッド。戦後日本のマルクス主義の受容のところから始めているので、本書では80年代批評ブームがマルクス主義に対してのカウンターとしての側面が強調されている。/仲正用語ポストモダンの左旋回について気になったので続けて読むつもり。2022/08/03
記憶喪失した男
14
ソーカル事件に触れてさえいないものの、日本の現代思想についての紹介としては充分役目を果たしている。読書案内本としては高い評価を与える。仲正昌樹は各所の要点を見事に要約して伝えており、現在のぼくではとても適わないだけの知識をもっている。見事な現代思想講義である。2017/05/02