内容説明
経済が上向けば、万事好調を装う日本社会。しかし、その先には幾重にも闇が広がっている。食と農を疎かにし、物を崇め、原子力エネルギーに突っ走り…負の部分を見ずに、すべてツケを先送りしてきた、その当然の報いが待ち受けている。ならば、いかに滅ぶべきか、死ぬべきか―敗戦の焼け野原から、戦後日本を見続けてきた作家が、自らの世代の責任を込めて、この国が自滅の道を行き尽くすしかないことを説く。著者渾身の一冊。
目次
第1章 この世はもうすぐお終いだ
第2章 食とともに人間は滅びる
第3章 これから起きるのは、農の復讐である
第4章 すべての物に別れを告げよ
第5章 また原発事故は起こる
第6章 滅びの予兆はあった
第7章 上手に死ぬことを考える
第8章 安楽死は最高の老人福祉である
第9章 日本にお悔やみを申し上げる
著者等紹介
野坂昭如[ノサカアキユキ]
1930年、鎌倉市生まれ。養子先の神戸で育つ。早稲田大学中退後、コント台本、CMソングなどを手がける。63年、処女小説「エロ事師たち」が三島由紀夫らに絶賛される。68年、「アメリカひじき」「火垂るの墓」で直木賞受賞。2003年、脳梗塞で倒れ、現在自宅にてリハビリ中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mitei
75
著者のこの国に対する絶望感がすごく伝わった。2013/10/03
ichiro-k
21
著者のイメージのまんまの内容。敗戦直後の食糧難がトラウマになっっているようだ。幼いころ好き嫌いが激しかった私に向かって亡くなった祖母が「戦争になったらこの子は大変だ」と言ったことを思い出す。 2013/03/28
壱萬弐仟縁
13
本屋立ち読み→図書館新刊コーナーより拝借。本屋には悪いが、貧困ODにとっては理想的(笑)。全体的に、ストレートに読者に入ってくることばが多い。だから最後まで澱みなく読み切ることができる。下山、終末とネガティヴだが。「中年は飢えを前に、酒でも飲んで死ぬのを待つしかない」(10頁)。そうだろ。そうだろ。少子化は希望の持てない本能の現れ(13頁)。立ち止まり、立ち返ることを忘れている(25頁)ために、憲法改正の勢力が支持されかねない。忌々しき事態だ。食糧や言語を粗末にする食えない将来日本。杞憂でない日本の醜悪。2013/04/16
ophiuchi
12
かなり過激な内容で、遺書のつもりで書かれているように思う。NHKもまだこの頃(2013年)はまともだったようだ。2018/08/02
更紗蝦
12
この本が出版されたのは2013年ですが、地震国に原発を作ることの危険性を指摘している第5章の初出が2001年ということに驚きました。東京が震災に襲われる危険性を指摘している第6章の初出は1992年です。食をはじめとする日本の様々な文化の喪失、拝金主義、無責任社会などへのストレートな批判の言葉の数々は、思い起こせば私が子供の頃は戦前生まれの方々がよく口にしていました。正直言ってその頃は煩くしか感じていませんでしたが、今になってようやく「戦争を体験した世代」の言葉の重さや切実さを理解できるようになりました。2014/12/02