内容説明
日露戦争に勝利した一九〇五年(明治三十八)、日本は国民国家としてのピークを迎えていた。そんな時代を生きた著名文学者十二人の「当時」とその「晩年」には、近代的自我の萌芽や拝金主義の発現、海外文化の流入と受容、「表現という生業」の誕生といった現代日本と日本人の「発端」が存在した―。いまを生きる私たちと同じ悩みを持ち、同じ欲望を抱えていた「彼ら」に現代人の祖形を探る、意欲的な試み。
目次
森鴎外―熱血と冷眼を併せ持って生死した人
津田梅子―日本語が得意ではなかった武士の娘
幸田露伴―その代表作としての「娘」
夏目漱石―最後まで「現代」をえがきつづけた不滅の作家
島崎藤村―他を犠牲にしても実らせたかった「事業」
国木田独歩―グラフ誌を創刊したダンディな敏腕編集者
高村光太郎―日本への愛憎に揺れた大きな足の男
与謝野晶子―意志的明治女学生の行動と文学
永井荷風―世界を股にかけた「自分探し」と陋巷探訪
野上弥生子―「森」に育てられた近代女性
平塚らいてう(明子)―「哲学的自殺」を望む肥大した自我
石川啄木―「天才」をやめて急成長した青年
著者等紹介
関川夏央[セキカワナツオ]
1949年、新潟県生まれ。作家。上智大学外国語学部中退。84年『海峡を越えたホームラン』で第7回講談社ノンフィクション賞、98年『「坊っちゃん」の時代』で第2回手塚治虫文化賞を受賞。2001年には「人間と時代を捉えた幅広い創作活動」により第4回司馬遼太郎賞を、02年には『昭和が明るかった頃』で第19回講談社エッセイ賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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