内容説明
“つながれないさみしさ”“つながりすぎる苦しみ”―アスペルガー症候群と脳性まひというそれぞれの障害によって、世界や他者との「つながり」に困難をかかえて生きてきた二人の障害当事者が、人と人とが「互いの違いを認めた上でなお、つながるために必要な条件とは何か」という現代社会の最も根源的課題に挑む画期的な書。
目次
第1章 つながらない身体のさみしさ
第2章 つながりすぎる身体の苦しみ
第3章 仲間とのつながりとしがらみ
第4章 当事者研究の可能性
第5章 つながりの作法
第6章 弱さは終わらない
著者等紹介
綾屋紗月[アヤヤサツキ]
1974年生まれ。2006年アスペルガー症候群の診断名をもらう。東京大学先端科学技術研究センター研究者支援員、東京大学グローバルCOE「共生のための国際哲学教育研究センター」共同研究員
熊谷晋一郎[クマガヤシンイチロウ]
1977年生まれ。脳性まひの電動車いすユーザー。小児科医、東京大学先端科学技術研究センター特任講師。東京大学グローバルCOE「共生のための国際哲学教育研究センター」共同研究員。著書に『リハビリの夜』(医学書院、新潮ドキュメント賞受賞)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
63
アスペルガー症候群の綾屋と脳性まひの熊谷による「つながらない」と「つながりすぎる」苦しみを当事者研究(自分についての研究)で著した本。情報のインプット・アウトプットに問題のある2人の身体知で、つながらない・つながりすぎるという主観的なことを言われても、読み手にとっては想像するだけで、ああ、そうなんだという感じで受け止めるしかない。「つながる作法」でぐるぐるモード、すいすいモード、あたふたモードと命名しているのは面白いんだけどね。2017/10/09
ゆう。
43
アスペルガー症候群の診断を受けた著者と脳性まひの著者が当事者研究を通じて、困難を抱えながらも他者とつながるということはどういう意味を持つのかを考察した内容です。違いを認めたうえでつながりあうことの大切さを学べました。当事者研究は自分に対する研究ですが、治療の論理でも、運動の論理でもなく、研究の論理だとしています。客観的かつ科学的に自分のことを分析するうえで研究の論理を貫くことは研究であるうえでは重要だと思います。しかし、運動の論理をもう一度埋め込まないと研究が生きないのではという問題意識を持ちました。2017/07/06
けんとまん1007
40
まさに、今の時代に読むべき本。表面的なつながりばかりで汲々としている時代だからこそ、考えてみる視点が多い。自分も心がけているが、ゆるい関係性を、複数持つこと。その中で、自分を考えること。2020/03/14
ネギっ子gen
34
小児科医・熊谷晋一郎とアスペルガー当事者・綾屋紗月が「生きづらさを抱えた人が生きのびるための一助」を願い書いた本。熊谷は脳性まひ当事者。『リハビリの夜』でリハビリを受ける側の苦痛を語る。その当事者の言葉。<「介助される」と聞くと、ただ身を投げ出して相手にケアを任せるラクな行為だと思われるかもしれないが、実際はそうではない。介助とは不特定多数の他者に無防備な身体をさらけ出し、身体に介入し合う行為である。うまく連動していないと危険だし、怯えも伴う>という感覚や「変えられる部分の過大評価」への警戒感は大事なり。2019/10/22
くるぶしふくらはぎ
31
アスペルガー症候群の綾屋さんと脳性麻痺の小児科医の熊谷さんがタッグを組んで書いた本。つながらない自閉症の苦しみ、脳性麻痺の筋緊張がつながりすぎる不便さ。当事者研究の二人の生の声に加えて「ダルク女性ハウス」と「べてるの家」のレポート。最後の熊谷さんの「個々人の差異はそのままに、同時に差異を超えた共感と合意を立ち上げる」「ひとりで傷をかかえこまないこと」この言葉、難しいけど誰かの居場所でありたいと願う。2017/08/28