出版社内容情報
「箱入り」だった子ども時代から胸苦しさに満ちた金沢での青春期、「枯れた」学生だった京都での日々。東大に招ばれ、逆風に身を置きながら、いまは亡き両親や敬愛する友、教え子、そして自らの行く末をおもう・・・。潔くてほろ苦い「大人のための」エッセイ集。
内容説明
世間知らずだった子ども時代から、孤独だった青春期、社会人となってからの日々、いまは亡き人々への思いまで。「けんかの達人」と呼ばれた社会学者が、その知られざる内面としなやかな暮らしを綴ったおとなのためのエッセイ集。
目次
1 思いだすこと(菫の香水;墓 ほか)
2 好きなもの(声;夕陽 ほか)
3 年齢を重ねて(青春;うた ほか)
4 ひとりのいま(佇まい;儀式 ほか)
著者等紹介
上野千鶴子[ウエノチズコ]
1948年、富山県生まれ。京都大学大学院社会学専攻博士課程修了。現在、東京大学大学院人文社会系研究科教授。女性学、ジェンダー研究のパイオニアで指導的理論家のひとり。近年は、高齢者の介護問題へとその専門領域を広げている。1994年『近代家族の成立と終焉』でサントリー学芸賞を受賞。社会学をはじめ、文学、政治・経済、アートなど幅広いジャンルにわたる著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ネギっ子gen
59
【著者の愛誦句:ひとはみなひとわすれゆくさくらかな(黒田杏子)】世間知らずだった子ども時代から、オーバードクターという名の失業者体験など。「けんかの達人」と呼ばれた社会学者が、NHK出版の「おしゃれ工房」連載ということで、<自分でも知らなかった未知の自分がひきだされる経験>を味わいながら綴ったエッセイ集。2010年発行。著者は、<若いときは柔軟だ、というのはウソ。若いときほど、アタマは固く、思い込みが激しく、固定観念でがんじがらめだった。それが次第に解きほぐされ、柔軟になってきたのは年齢のおかげだ>と。⇒2023/12/16
シュシュ
26
おひとりさまの上野さんにはまってしまった。辛口のイメージもあるけれど、この本は、豊かで深くてユーモアがありゆったりしたエッセイだった。高校時代を過ごした金沢の『W坂』の描写がきれいで、映画を見ているみたいただった。日常のエッセイであっても、端々に弱い立場の人の視点があるのが、さすが社会学者だと感じた。「夢見るひとは、現実を拒否する傾向があるようだが、生きていればなんでもアリ、のリアリストのほうが、現実を許容する幅が広いかもしれない」しなやかなリアリストもいいなと思う。自然に対する思いも潔くてよかった!2015/05/11
れんこ
19
少し先を行く上野先生のエッセイ。お風呂の湯量でお悩みになるなんて、私と同じ♪と身近に感じながら、この先のことを考えさせられた本。2016/05/13
Matoka
19
おひとりさまの老後を書いてベストセラーとなった上野千鶴子さんのエッセイ。おひとりさまという言葉の寂しげな響きとは対極と思われる、人持ちの人生を送っている様子が伝わってくる。そして年越しをおひとりさまでは過ごさないんだね。2015/08/30
anne@灯れ松明の火
15
来週、講演会なので予習。朝日新聞の身の上相談は読んでいるが本は初めて。帯に「”けんかの達人”と呼ばれた社会学者が、その知られざる内面としなやかな暮らしを綴ったおとなのためのエッセイ集」とある。確かに、ところどこに毒はあるものの全体の印象は落ち着いている。他の著作に詳しい人には物足りないのかもしれないが、私としては、満足した1冊。あとがきを読み、”編集者って、たいしたもんなんだなあ”と改めて感じた。作家と編集者の良き出会いがあってこそ、良い作品が私たちのところに届けられるのだ。裏方の編集さんに感謝!2011/05/29