私とマリオ・ジャコメッリ―「生」と「死」のあわいを見つめて

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  • サイズ A5判/ページ数 113p/高さ 22cm
  • 商品コード 9784140813751
  • NDC分類 740.237
  • Cコード C0095

内容説明

虚無と孤独の底から立ち上がる表現への渇望、自由への意思。孤高の写真家をめぐり静かに深まりゆく作家の言葉。

目次

1章 白は虚無、黒は傷跡(スカンノの少年;心と躯に刺青を彫りこまれる;「想像への入り口」としてのモノクローム;あらかじめ詩人である男が見る異界;化生)
2章 「時間」との永遠のたたかい(「時間の強制」からの離脱;識閾から見る風景;世界はそこに実在するのか;Partition)
3章 生に依存した死、死に依存した生(死にゆく者の側から撮られた風景;「死」とむきあう空間のにおい;「見ること」と「見られること」;「死ぬのもむずかしいのよ」;夜行列車(抜粋))
4章 資本、メディア、そして意識(「無意識」に入りこむ資本;映像と資本の腐れ縁;資本はジャコメッリさえもとりこむ;倒錯した状況のなかで;解体)
5章 解かれなければならない「謎」、解いてはならない「謎」(謎と自由;表現者はいかにして資本と権力から自由でありえるか;ジャコメッリという人間の手ごたえ;帰結のむこうにはじまりがある)
箱写真屋とジャコメッリ―あとがきにかえて

著者等紹介

辺見庸[ヘンミヨウ]
1944年宮城県石巻市生まれ。70年、共同通信社入社。北京特派員、ハノイ支局長、外信部次長、編集委員などを経て、96年退社。この間、78年、中国報道で日本新聞協会賞、91年、小説『自動起床装置』(文藝春秋、文春文庫、新風社文庫)で芥川賞、94年、『もの食う人びと』(共同通信社、角川文庫)で講談社ノンフィクション賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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かふ

17
ETV「こころの時代選 『在る』をめぐって」で辺見庸のインタビュー番組で取り上げられていた写真評論。ジャコメッリはデジカメが登場してくる頃(2000年)に亡くなっている。デジタルの資本主義(鮮やかに色付けされ欲望を満たす)のカラーの世界とは対極にあるジャコメッリのモノクロの世界。表面的なインスタ映えの写真とは対極なのは表面より内面の世界をえぐり出す。死と時間の境界にある生。バルトは『明るい部屋』で「一般的関心を破壊する要素」である、刺し傷や小さな裂け目という意味の「プンクトゥム 」と名付けている。 2019/07/25

nbhd

15
「仮死状態の主体が撮ったような写真」と辺見さんが評するジャコメッリ。表紙の写真のように、ピンぼけしたモノクロの世界が不気味です。辺見さんによると、現代人の眼は資本主義に冒されている、というんですね。しかも資本主義は、生と死のあわいを捉えたジャコメッリですら、取り込みうる主体不在のシステム。中平卓馬さんという写真家の象徴的な言葉が引用されています。「眼はすでに制度化された意味をひきずったまま、意味の確認をしか世界に求めようとしない。眼は外界へ通じる透明な窓ではなく、世界から私を遮断するシェルターに変わる」。2019/08/04

さっちも

12
気がまぎれるかなぁと読んだのだが、ちっとも頭に入らなかった。2018/04/26

さっちも

11
便所にあるジャコメッリの分厚い写真集は深遠な何かを表しているのだろうけど、それが語りかけてくる気配がいっこうにこない。この本は発作的に読みたくなってしまうから、鈍い感性がほとほと嫌になる。辺見曰く「世界を純粋客観的にとらえうるとするのは近代以降、今日にひきつづくひとの驕慢な幻想である。私たちはそれぞれの脳裡に秘めた知と想像(妄想)と狂気以上のものを世界に投影することは所詮できはしない。世界とはすなわち、かなたにある客体像ではなく、内なる非客観的ないし主観的幻想なのである」このへんが実感として分かればなーと2017/10/25

rakim

9
あざといぐらいに操作(絶対に装飾ではない、と思う)されているのはわかっていても、突き刺さってくる写真のイメージは言葉の空虚さを感じさせるのです。でもそこにある辺見氏の言葉は、ジャコメッリの世界に向かう心の後押しをする。漠然とした胸騒ぎを増幅させるのか、静かに鎮めるのか、それは読者の心情によるのでしょう。2016/11/21

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