出版社内容情報
本書は古代文明の発生から現代に至る戦争の歴史的な変遷を体系的に捉えるとともに,戦争を理論的に考察し,さらに,21世紀へ向けての平和の構築の可能性を探る.歴史と現代を結びつけた本書は,未来の世界を考察する手懸りを与えるであろう. 吉野作造賞受賞
目次
第1部 戦争の構造(国家と戦争;軍事化と戦争システム;戦争のプロセス)
第2部 戦争の一般理論(世界システムと戦争サイクル;行動科学と戦争研究)
第3部 暴力と平和の狭間で(国家安全保障;暴力をこえて)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かじやん0514
5
1989年の時点での、戦争と平和に関する社会科学的研究の到達点がよくまとまっている本。特に、戦争の長期歴史的研究に関するレビューは貴重である。問題は、①同盟による抑止政策を肯定的にとらえる一方で、第二次世界大戦後の同盟の中核を成していた核抑止に関する評価が低く、これらが矛盾している、②戦争や武力行使を規制してきた国際法の発展やそれに寄与した平和運動の役割への言及が薄い。あと、著者がこの本通りの立場を堅持せず、戦争国家化へと突き進む政権の手足になったことが悔やまれる。2015/01/02
わたがしはかせ
1
★★★☆☆政治や経済と戦争との関係を数々の歴史の例を紐解きつつまとめていてとても読みごたえがある。「世界との貿易の結びつきの大きい国のほうが他国との良好な関係を破壊するコストに敏感で、戦争回避の指向性が高い。最強国が独占的に国際秩序を主導するシステムではなく、最強国が緒勢力と強い経済相互依存関係を維持し、国際秩序に関わる決定について各勢力を尊重して打診するシステムが望ましい。」2013/08/15
Kei
0
ヘゲモニー論が基本。2015/06/30
日の光と暁の藍
0
戦争に関連する議論をこれでもかというほど詰め込んだ濃密な本だった。個人的には、「第四章 世界システムと戦争サイクル」がかなり面白かった。経済循環と戦争を関連付けたコンドラチェフの長期波動理論、経済上昇局面で大戦争が起きる蓋然性が高まると主張したゴールドスタイン、トインビーの戦争と平和の循環説、ウォーラーステインの覇権循環、モデルスキーの世界大国サイクルなどが、歴史的記述と共に第四章で論じられている。全体を通してみると、一読しただけではとても消化しきれない内容の濃さなので、また折に触れて読み返したい。2014/03/02