出版社内容情報
癌に冒されたカーヴァーが迫り来る死を見据えながら綴った「使い走り」他、壮絶さと淡々とした風情を湛えた最後の七短篇を収録。
内容説明
作家としての輝きのピークにあって、病に倒れたカーヴァー。生前に発表された最後の一篇であり、壮絶さと、淡々とした風情が胸を打つ「使い走り」ほか、秀作全七篇を収録した最晩年の短篇集。ライブラリー版のために改訳。
著者等紹介
カーヴァー,レイモンド[カーヴァー,レイモンド][Carver,Raymond]
1938年、オレゴン州生まれ。製材所勤務、病院の守衛、教科書編集などの職を転々とするかたわら執筆を始める。77年刊行の短篇集『頼むから静かにしてくれ』が全米図書賞候補、83年刊行の同『大聖堂』が全米批評家協会賞及びピュリッツァー賞候補となる。88年、肺癌のため死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kazi
32
病に倒れたカーヴァーの最後の短編となった「使い走り」を含む短編集。彼の作品において微妙なニュアンスでしめされる悲惨だったり、淡い親密さだったり、ある種のユーモアだったり、深い余韻を残し味わい深い。この短編集なら表題作の「象」が個人的ベストかな〜。親類にたかられてにっちもさっちも行かなくなった男が主人公の短編なのだが、悲惨の中にも妙に“おかしみ”があり、愛もあり、「ああ、人間ってこんなもんだよな〜」って説得力感じるところもあったりして、最後は急展開で終わる。完璧な短編だと私は思った。以上、レビュー終わり!2022/06/25
くさてる
31
短編集。なんということもなく過ぎていく日常のなかで、ふと起こる出来事にひそむ苦しさやどうしようもない感じが、身に迫って苦しかった。そしてその苦しさはまるでソファで自分の隣に座っているだれかのように自分にとって親しく感じられるものだ。そういう意味で「親密さ」「象」の二編が特にお気に入りです。2016/08/03
トラキチ
31
7編からなる短編集、村上春樹訳。不倫や家庭崩壊や貧困など重くて不幸な話が多いのが特徴ですが、やはり村上訳なので馴染みやすい文体が功を奏しているような気がします。 圧巻は異色ともいえるラストの「使い走り」でカーヴァーの最後の短編ということでチェーホフの死を題材としている。時代も国も違うけど短編作家の名手ということで恐らくチェーホフのことをリスペクトしていたのでしょう、似たような境遇に置かれた自身をメモリアルな題材でもって綴った心に残る作品であります。 2014/05/23
Small World
23
カーヴァー作品は3作目です。短編ばかりの作家さんなので、夢中になって読むわけではないのですが、静かな1日にゆっくり読むのが正しい感じのする作家さんですよね。収められているのは7編で、自分としては表題作の「象」も面白かったですが、一番は「引っ越し」が良かったです。次はライブラリーの第1短編集に行ってみようと思っています。2018/10/27
fseigojp
23
生前出版された4短篇集の最後 2016/09/15