内容説明
アグレッシヴな小説作法とミステリアスなタイトリングで、作家カーヴァーの文学的アイデンティティを深く刻印する本書は、八〇年代アメリカ文学にカルト的ともいえる影響を及ぼした。転換期の生々しい息づかいを伝える、鮮やかにして大胆な短篇集。
著者等紹介
カーヴァー,レイモンド[カーヴァー,レイモンド][Carver,Raymond]
1938年、オレゴン州生まれ。製材所勤務、病院の守衛、教科書編集などの職を転々とするかたわら執筆を始める。77年刊行の短篇集『頼むから静かにしてくれ』が全米図書賞候補、83年刊行の同『大聖堂』が全米図書批評家サークル賞及びピュリッツァー賞候補となる。その独特の味わいの短篇作品はアメリカ文学界に衝撃を与え、後進の作家にも大きな影響を与えた。数々の短篇作品のほか詩人としての作品も多数。88年、肺癌のため死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chantal(シャンタール)
85
【第152回海外作品読書会】カーヴァーの短編集はその題名がロマンティックで、題名に惹かれて読んでしまうんだけれど、想像力が試される。よくわからない話も多く、巻末の訳者である村上さんの解題を読んでやっと理解したりする。自分の作品を何度も改正して発表したりもしてるらしく、「風呂」のロングバージョン「ささやかだけれど役に立つこと」もその表題作に惹かれて昔読んだなあ。内容忘れちゃったけれど。ともかく、読んでいて昔よく見たアメリカ映画の映像が浮かんで来るような、気持ちの良い文章ではある。2020/03/14
ケイ
83
短編17作のうち最も長い表題作。二組の夫婦の語り。愛とはなんなのか?老夫婦の夫が、妻が見えないと悲しむ気持ちは紛れもなく愛だと思った。一つ目の「ダンスしないか?」どうってことはない話にみえるが、春樹氏の解説にあるようにいたたまれなさを多分に含んている。「ミスター・コーヒーとミスター修理屋」最後の妻の諦観のようなものがやりきれない。カーヴァーは初めて読んだが、食わず嫌いだったのだと反省。春樹氏の解説も含め、何度も味わって読みたい。春樹氏が自分の気配を消して訳しているように思う。作者への敬意かな。2014/07/20
mizuki
49
レイモンド・カーヴァーは初めてなので、まずは有名なこちらから手に取りました。17の短編集はどれもアメリカ人らしさを感じさせてくれます。人との関わり方や愛についての考え方、感じ方は、わたしにはあまり共感できないのだけれど、嫌じゃない。登場人物にダメな人が多いのに読んでいて嫌にならない。なぜでしょう⁉︎ 村上春樹が言うように、これも全てカーヴァーにしか出来ない技なんでしょうね。変わったタイトルにどれも惹かれます!物語を読み、またタイトルを読み返す。このタイトル素敵と、まるで洋楽を聴くような感覚で楽しみました♡2016/06/11
zirou1984
44
それはつまり何かを語ろうとしながら何も語り切れないこと。この十七の短編に登場する人物はいずれも破綻した愛、もしくは破滅しつつある生活の渦中に置かれながら、なぜそうなってしまったかといった過程や背景についてばっさり省略されてしまっている。カーヴァーが描いているのは因果や詩情といったものを捨象した悲劇から炙りだされる客観性の暴力であり、内面を描かないことで逆説的に浮かび上がってしまう詩情性だ。読み終えた後、夕闇にゆっくりと目が慣れていくように、世の中の空虚さや不確かさについての感覚が研ぎ澄まされていく。2016/02/11
sakap1173
41
カーヴァー初期の短編集を10年ぶりくらいの再読。 なんて言えばいいのだろう、決してひとつひとつの短編の読了感は爽やかではない。余計な文章を削ぎ落してバッサリとした結末が続く。 しかし何かが心に残る。 そんな不思議な作品です。名著と言われる「大聖堂」も読もうと思う。2021/05/16