感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ブルーツ・リー
4
壮年期の谷崎潤一郎は、戦国時代を舞台にした軍記物を多く書いていた。 それらの作品のできは非常に良くて、物語として楽しめるものであったのだが、それらを書いていた期間が非常に長かった為か、時代を「現代」に戻して書くようになった本巻の辺りでは、作品が仕上がらず終わってみたり、苦戦の痕が色濃く見える。 谷崎潤一郎をもってしても、小説が書けなくなる。などという事が起こるのだ。 ただ、現代を舞台とする芸術性に富んだ作品に、ここで回帰したからこそ、戦中戦後の「細雪」に繋がる訳で、この時期の苦労は後に実を結ぶ事になる。2022/12/20