内容説明
江戸の町、竹林に囲まれたしもた屋で、産んではいけない子どもを孕んだ女たちを受け入れ、子堕ろしを行ってきた「闇医者」のおゑん。彼女の元には、奉公先の若旦那と恋仲になった女中、あやかしの子を孕んだと訴える武家の奥方など、複雑な事情を持つ者たちがやってくる。時代小説の名手がおくる、祈りと再生の物語。
著者等紹介
あさのあつこ[アサノアツコ]
1954年岡山県生まれ。青山学院大学文学部卒業。小学校講師を経て、91年に作家デビュー。『バッテリー』で野間児童文芸賞、『バッテリー2』で日本児童文学者協会賞、『バッテリー1~4』で小学館児童出版文化賞を受賞。2011年、『たまゆら』で島清恋愛文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぶち
105
読友さんご紹介のシリーズ。子を堕ろすために訪れた女たちの身と心を診る、闇医者おゑんのシリーズです。おゑんは子堕しの闇医者と名のっていますが、堕胎ではなく、思い惑う女たちの話を聞き、心の苦しさを解きほぐし、助けの手を差しのべる心の治療が目的だと思えてきます。同じ作者の『弥勒シリーズ』が男の心の闇を書いているのに対して、この闇医者シリーズは女の心の深淵を描き出しているようです。おゑんが女たちに投げかけた言葉の数々が、読んでいる私へも届きます。それらの言葉は、心の指針としたくなるほどの示唆に富んでいます。2022/06/02
とし
100
闇医者おゑん秘録帖 1巻。産んではいけない子どもを身ごもった訳ありの女たちを受け入れ、小堕ろしを行う、祖父が異国人の闇医者おゑんさん、それを助する茂三郎、春、末音、暗く悲く凄い話ですが、最後にほっとさせられます。2022/02/25
はつばあば
67
文庫初のレビューにたじろぐが、今も昔も変わらぬ男の身勝手さに苦言を。恋と云う名の元にでも、嫁という立場であってもすることをしてしまえば子が出来る。堕胎と名の通り一つの命を奪ってしまうことだ。孕んだのが悪いのか孕ませたのが悪いのか。唯々諾々とする女の生き方におゑんは投げかける。自分はどうしたいのだと。異国の人を祖父に持ち、幸せに暮らせるはずはなかろうと医者としての知識だけでなく生き方をも伝えられる。男性の皆様、自身の快楽を求める前にゴムをお忘れなく。でなければ「あなたの子です」と突きつけられた時を覚悟して。2015/12/22
がらくたどん
48
単行本が出た頃は第2弾まででもうお腹いっぱいで。でも再読の予感があって2冊だけ文庫を積んでおいた。寝かせて十年!ぼんやりしていたら4巻が出ちゃったのを教えて頂いた。感謝感謝!還暦過ぎた今なら読める。というか滋養強壮・免疫力増進の読むカンフル。江戸の街。竹林にひっそり設けた小屋敷は堕胎の闇医と人は謂う。「どうしようもない、ねえ」「使い勝手のいい言葉ですよね」産める産めない産みたい産みたくない。出産の葛藤を通して見えてくるのは己の前に延びる幾多の途。不遇なお春の決意。深窓の妻妾の意地。おゑんの壮絶な過去。傑作2024/04/23
タツ フカガワ
42
正当な医師にかかることのできない女たちを診て、ときに闇へと葬られる子もある。ゆえに闇医者と呼ばれるが、おゑんが行うのは女たちを闇の中から引き上げる再生の施術。全編に緊張感を孕む筋立てや、ときに伝法な口調になるおゑんの出自が明らかになる半ばあたりからは一気読みでしたが、まだ人物像は模糊としている。それが明らかになるのは次作かしらん。2018/09/10