内容説明
生誕200年のショパン、シューマン…。モノ書きピアニストが、6人の大作曲家と同時代の文学に光を当てる。
目次
第1章 モーツァルト―カメレオンの音楽
第2章 シューマンとホフマンの「クライスレリアーナ」
第3章ショパンとハイネ
第4章 ワーグナーと倒錯のエロス
第5章 ラヴェルとレーモン・ルーセル
第6章 ランボーの手、ドビュッシーの手
著者等紹介
青柳いづみこ[アオヤギイズミコ]
ピアニスト・文筆家。安川加壽子、ピエール・バルビゼの両氏に師事。フランス国立マルセイユ音楽院首席卒業。東京芸術大学大学院博士課程修了。1989年、論文「ドビュッシーと世紀末の美学」により、フランス音楽の分野で初の学術博士号を受ける。90年、文化庁芸術祭賞受賞。演奏と執筆を両立させ、著書には『翼のはえた指 評伝安川加壽子』(吉田秀和賞)、『青柳瑞穂の生涯』(日本エッセイスト・クラブ賞)、『六本指のゴルトベルク』(講談社エッセイ賞)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
75
(前略)「ショパン、シューマンはじめ、六人の大作曲家と同時代の文学との関わりに、モノ書きピアニストの切り口で光を当てた比較芸術論」とか。対位法の意味が文学もだが、音楽の素養も全く欠けている自分にはなんのことやら。「音楽で,独立性の強い複数の旋律を調和させて楽曲を構成する作曲技法」なんて説明を受けてもさっぱり。2022/04/04
うめ
14
当時の歌劇はメンバーが豪華‼︎作家と作曲家。音楽と文学を対比させたことが無かったから、斬新で面白かった。やはり芸術同士、ここで考察されているように、お互いがお互いに影響を与えあったに違いない。文章でしかできないこと。音楽にしかできないこと。歴史を多角的に紐解くのって刺激的。モーツァルトとワーグナーのパートが特に好き。時代や背景を踏まえた上で曲を聴いたり、文学に親しみたい。と思えましたよ。教養、雑学本としても◎2016/06/15
鳩羽
13
ピアニストでも著述家でもある著者が、音楽家と同時代の作家などを取り上げ、音楽と文学の両方から立体的にその時代の文化の雰囲気を捉えていく。モーツァルトの長調作品の明るさに、白昼に見る恐怖やおぞましさのムージルの短編を想起し、その悲劇と喜劇の互換性をカメレオンにたとえてみたりする。聴衆を楽しませる音楽は、人生をあるがままに生き切る人間が神を楽しませることに似ているようにも思った。そこからのロマン主義への移行は、全然ベクトルが違っていてまた面白い。2016/04/10
Rie
9
6人の作曲家を取り上げ、音楽と文学とを結びつけていく。関連性の見つけ方が自由で、色々広がっていくのが面白かった。文章もとても素敵で「音楽を読む」という感じ。音や文字で、受け手が普段意識しない感情まで動かすというのは、どんな才能、環境、精神性…によるものなのだろうと思いを馳せる。各々の時代の中で生きていた作り手たちの息遣いを感じた。思いを馳せすぎて多少こんがらがったぐらい(笑)2015/08/02
salvia
5
付箋だらけの本になった。明快なモーツァルトの解釈に長年のもやもやが晴れたり、ボードレールよりもジッドの反応に共感したり。6人の作曲家と投影する作家の「創作家身ぶり」を論じたこの本の、どの章もとても興味深い内容だった。まだまだ未消化なので、当分は手元に置き、楽曲を聴きながら読み返したいと思う。そしてホフマンを読まなくちゃ。2022/01/18